言えない本音
「あのね、私…光くんと、付き合えたんだ、」 私の親友、葉桜結衣は真っ直ぐにこっちを見つめて、そう言った。 その顔は夕日のせいか、紅潮していて。 「──そっか、良かったじゃん!」 そうやって本音は喉の奥にしまって、思ってもない事を口に出した。 涙が出そうなのを隠すように、必死に笑った。 「私も好きだった」なんて言えたのなら、どんなに楽になるんだろう。 私の唯一の友達で、親友だから、そんな事言えないけど。 それから結衣は嬉しそうに笑って、 「えっとそれでね、これから一緒に帰るんだー!」 私にも見せた事はない、心の底から嬉しそうな笑顔。 羨ましくて羨ましくて、 さっき我慢したのに、涙が溢れて来た。 「うぇっ!?遥っ、だ、大丈夫?」 そう言って結衣はハンカチを差し出してくれる。 「…大丈夫っ、なんかあまりにも嬉しそうだったから」 「そっかー、っあ、もう約束の時間だー!じゃ、また明日ね、遥!!」 「うん、また明日」 元気に言った後、バックを持ち、駆け足で結衣は教室を出て行った。 その足跡が聞こえなくなった後、呟いた。 「また明日、か。明日はもう居ないのにな」 ──結衣にも伝えていなかった。 お父さんの会社の都合で、遠くに引っ越す事。 他の学校で今みたいに上手く馴染めなかったらって、心配だな。 ずっとここに居たい。 そう思うと悲しくなって、また涙が出てきた。 「まだ好き、だなぁ。」 今度の涙は滝みたいに流れて、なかなか止まらなかった。