心踊る川辺、夏の隅田川
ぱっくりと大口を開けるのは、夏の空。 「…本日は雲もなく、絶好の花火日和となっています…」 そこかしこでニュース番組の撮影が行われている。 人はうじゃうじゃ、夏の隅田川。暑苦し、夏の隅田川。 今日はと張り切って着た浴衣も、歩きにくいし暑いし苦しいし。 なぜ人混みに勇んでやってきてしまったのだろうかと後悔するが、今更家に戻るのも勿体無い。 テレビに齧り付いていれば、クーラーの効いた部屋にいれば、と地団駄を踏む。 しかし、やはり生で見るのはテレビとは違うのだと言い聞かせてやり過ごす。 時計を見ると、まだ打ち上げまで30分余りあった。 一旦雑踏から抜けて、何か食べたくなった。食べ終わってからもう一度加わればいい。 なんとか体を捻り、少しばかりの隙間を縫って人の道から出る。 箱に押し込まれたような状態からやっとこさ解放され、ほっと息を吐く。 ぶらぶらと火照った体を夜風で冷やすように歩いていると、すぐに店が見つかった。 "もう"30分前だから、とガラス張りのその店はガラ空きだった。 『和風カフェ ぶらり・ふらり』とあるドアを開けると、冷気が体に絡まる。 求めていた快感に、肌寒さか心地良さか体が震えた。 「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」 隣の店は洋風カフェで、なかなか人気のようだったが、浴衣で洋風というのもどうかと思って和風カフェにした。 木目調のカウンターに座ると、店主らしき人が注文はと尋ねてきた。 抹茶パフェで、と頼むとでしょうねと言って苦笑される。 「うちの店に来る人はみんな抹茶パフェを頼んでいくんですよ。他のもんには見向きもせず。」 人気ってことはそれはそれで嬉しいんですけどね、とため息混じりにこぼす。 「東京の人って大変ですね…」 私の近所には、メニューこそ店主が張り切って作るものの皆塩ラーメンしか食べないというラーメン屋がある。 しかし、そこの店主は特になんとも言わずに実験だと言ってメニューを増やし続けている。 東京は物価高くてそうもいかないとか?と一人感心していると、呆れたように呟かれた。 「あんた県外の人か…」 そう言って出された抹茶パフェ。 下の方は抹茶ペーストやコーンフレーク。上に行くとアイスやクリーム、抹茶パウダーなど。 なるほど人気なわけだ。味も絶品である。 …これがたまに食べられたらいいなぁ… 「お客さん、あと10分くらいで花火始まりますよ。そろそろ行ったほうが…」 パフェを食べ切って会計を済ませる。 慌てて外に出ると、店の前の道はさっきよりも混んでいた。 さっきいた雑踏はさらに密度が増加している。 なにせ川辺の一等席なのだ。もう中に加わるのは難しそうだった。 仕方なく人溜まりの淵に立って待つ。 先程の暑苦しさは戻ってきたが、先ほどより楽だった。 熱を分つというのか、同じ目的で時を過ごすことで一時の友情とやらができているのではないか。 冷たい都市東京という話だが、なかなか良いではないか、隅田川。 花火が始まった。 赤、青、黄、緑、色とりどりの花火。 皆一斉に手を伸ばし、スマホで動画を撮っている。 生憎人のせいでほとんど花火は見えなかった。 チラッと見えた大輪の花はもう美しや。テレビとはまた違うなとまた一人感心する。 花火の音に揺らされて、かき消されて、これは相乗効果というのか? 花火が終わって帰り、家に入るや否や、家族に衝撃的な言葉を発するのであった。 「私、東京に住む!」 美味しいパフェもあるし。 ー注釈ー 主人公は他県から隅田川に花火を見にきたようです。 花火といえばロマンチックな話が…となりますが、彼女が惚れ込んだのは…!? 隅田川沿い! その後、本当にあの「ぶらり・ふらり」の近くに住み、常連さんになってるらしいですよ! ちなみに、作者は隅田川の花火を直で見たことがありません! 隅田川沿いに「ぶらり・ふらり」というカフェがあるかも知りません! あしからず。
みんなの答え
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表現力がすごい!
どうも!ちーやんです! パフェ、花火、川(?)いいですねぇ(?) 抹茶パフェ食べてみたいです! 聞いただけで美味しそうに見えてくるぅ