通学路で君と会えて良かった。
「はぁ。」 今日の最後の授業に大幅に遅刻してしまって、こっぴどく怒られた日の帰りだった。 少し日が欠けてきた頃、私は通学路を、いつも通り歩いていた。人気の少ない通学路。 教室を移動しないと行けないのを忘れていて、なのにチャイムがなるまで友達と遊んで、しかも筆記用具を忘れたなんてバカじゃないの。 ぐるぐると一人反省会を開きながら、私の思考は空と比例してどんどん暗くなっていく。 「わッ!」 しまった。思考に気を取られていて前を見ていなかった。膝が痛い。少し擦りむいてしまったのだろう。 そういえば……重かった肩が軽くなったと思えば、バックが見当たらない。どこに行ったんだ……。 後ろを振り返ると、青年が私のバックを受け取れと差し出していた。 少しつり目で綺麗な顔立ち。そして、肩位まであるセンターパートな髪の毛は、銀髪だった。 近所の高校生だろうか。たまに見たことのある制服を着ている。 ぐいっと、彼は手に持っていたバックを私に近づけた。 「あ……ありがとうございます。」 バックを受け取る。 すると、彼が笑った。とても優しく。まるで彼に包まれるような。暗くなったここ周辺と、私の心を明るく照らしてくれるような、そんな笑顔だ。 彼の笑顔に呆気に取られていていると、そういえばさっきから彼は喋っていない気がする。まだ、出会って数分。たまたま彼が話す必要がなかった、ただそれだけのことだと思えば違和感はないのだが、気になってしまったからには仕方がない。 「あの……失礼かもしれませんけど、もしかして……耳が聞こえない?」 すると彼は、横に頭を振った。綺麗な銀髪がゆらゆらと揺れて、綺麗だと思ってしまった。てか、この質問が聞こえている時点で違うじゃないか。 「じゃあ……」 なんだろう。目は見えてるっぽいし。そう考えていると、彼がポケットからスマホを取り出した。なにか文字を打ち込んでいる。 『私、言葉を話すことが出来ないんです。』 「……え? そんなの聞いたことない……。」 予想外の返答にびっくりしてしまった。言葉が話せない……なんて。 『原因は分からないんですけどね。』 そう書き、彼は立ち去ろうとした。待って。なぜか分からないけど彼と別れたくない。 「あのっ!またここで会いませんか!」 彼はあの素敵な笑顔を見せてくれた。それは「いいよ」と言ってくれているのかな。