本当に君って、わからない。
「俺、桜場さんが好きです!付き合ってください!!」 「ごめんね、気持ちはうれしいんだけど…私、好きな人いるから」 俺こと、高野誠の恋は、一瞬にして打ち砕かれた。 「は?あんたバカなの?学校一のマドンナの桜場さんが、あんたみたいな地味なメガネ男子と付き合うと思ったわけ?」 「…んなこと言うなよぉ~」 俺にグチグチ説教(?)をしているのは幼馴染の紺野葵。いつも俺に説教してきやがる。まあ、嫌いではないけど。 今、家の方向が一緒だから、一緒に帰ってるんだけど、そのせいでいろいろ誤解される。…付き合ってるとか。 「どんだけへこたれてんのよ?高校生になって、もう少しメンタル強くならないもの?」 「いいよな~お前みたいなメンタル石の奴は。それに比べて、俺は…」 「自分のこと否定しないっ!」 はぁ…っとため息ついてうつむいたら、何か黒いものがぴゅーっと通り過ぎて行った。 「あ、猫」 黒いものが行った先を見ると、そこには黒猫がいた。 「わっ、猫かわいーっ、私、猫好きなんだよねー」 そう言う葵を横目に見つつ、俺は猫に近づいて行った。そーっとアゴの下を撫ででやると、ゴロゴロと目を細めて鳴いた。 「…そこが、誠のいいとこだよね、誰に対しても優しい」 「え?」 「ううん、何でもない」 ニコっと笑った葵は、ツインテールを揺らしながら歩き出した。俺は軽く走って葵を追いかける 「…ね、誠」 葵は振り向くと言った。 「何、どうしたの」 「月…綺麗だね」 月は見えているが曇でかすれており、満月でもない。 「今の月って、そんな綺麗じゃ…」 「んもう!あんたバカなのっ?私が直接言うのが恥ずかしいからこんな遠回りに言ってるのに、ロマンチックな展開作ろうとしたのにっ 珍しく頬を赤く染めて答える葵。どうしたんだ? 「それ、どういう意味…?」 「意味ぐらいググるか人に聞くとかして調べなさいよっばーか」 「えぇ…」 「ま、ヒントは教えてあげる。ヒントは、『夏目漱石』。明日、返事待ってるから」 そう言うと葵は駆け出していった。 家に帰って、晩ご飯を食べている時に、姉に聞いてみた。 「姉ちゃん、『月が綺麗ですね』って、どういう意味?なんか、夏目漱石と関係あるみたいだけど?」 「あーそれね、夏目漱石が『Iloveyou』を、『月が綺麗ですね』って訳したことから始まったんだって」 …葵、本当に君って、わからないよ。