優しさの魔法
ピピっ、ピピっ、ピピっ…もう、朝からうるさいなあ。早く止めなきゃ。枕元の目覚ましを止めようとして手元が狂い…。ドンガラガッシャーン!! 「だあっ、めんどくさーい!!!」 私は落ちてきた教科書やら本やらを顔からどかしてベッドから跳ね起きた。全くもう、飛んだ目覚ましだったよ…。ぼやきながら時計を覗くと…「え、もう7時半じゃん!?ママ、なんで起こしてくれなかったのー!?」「え、だってあんた今日日曜じゃないの!」「違うのっ!」だって今日はなんてったって… 魔法使いの昇格試験だからー!! 「遅いっすよ姉貴いっ、早くしないと大物とられっちまいますって!」「分かってるってば、じゃなんで起こしてくんなかったの!?」「だって俺っち猫っすよ!?そら無理ってもんですわ」急いで着替えてる私のそばで虎蔵がにゃあにゃあ叫んでる。 「ほらほら早く着替えてください姉貴。今日は半世紀に一度の全国魔法少女大会なんすから!これを逃しちゃあもったいねえ」そう、今日は大きな魔法少女大会があるの。ここでフェアリー・ゴッド・マザーから認められたら、綺麗なドレスでガラスの靴を履いた、一人前魔法使いになれるんだって。「着替え終わった!…てか虎蔵これでも使い魔なんだから、魔法で変身とか行けたくない?」「昨今の魔法少女は衣装自前なんすよ。自動変身機能機高いんすよねー」「このケチ!」「ケチとは失礼な。あっしは筋金入りのどケチっすよ?」「どっちでもいいけどさっさと行くよ、間に合わなくなっちゃう!!」 …と、元気よく飛び出したその先に…。 「おばあちゃん…」 前方に腰をかがめたおばあちゃんが、道に転がったりんごを拾い集めている。その数、ぱっと見…100個ぐらい。さて、どうする…? 案1。知らないふりして横を通り過ぎて、ぎりぎり大会場所に到着。無事魔法使いになる。案2。見知らぬばあさんのりんごを拾う。 …私は、しゃがんで足元に転がっているりんごを拾い上げ始めた。「何してんすか、大会間に合わなくなっちゃうっすよ!?」虎蔵が叫ぶ。 だってしょうがないじゃん?困ってる人を見捨てらんないよ。 一個ずつ、りんごを拾っておばあさんのカゴに入れてあげる。まだ魔法が上手く使えないから、地道にやるしかない。おばあちゃんは黙って、同じようにりんごを拾う。虎蔵も横で、私たちを黙って見てる。 ようやく拾い終わった。…けど、大会には絶対間に合わないなあ。ため息をついたとき、おばあちゃんがびっくりするくらい素早く私を振り返って、頭を撫でた。 「…優しさこそが、いちばんの魔法だよ」 え?って聞き返そうと思ったのに、そこにはもうおばあちゃんはいなかった。 「虎蔵、帰ろ。」そう言ったのに、返事がない。 「虎蔵?」虎蔵は、目を見開いて私を見つめている。 「…姉貴、自分を見てみてくだせえ」 そう言われてみてみたら… 私は、真っ青なドレスに身を包んでいた。そして、 …足には、ガラスの靴を履いていた。