4文字の想い。
このままじゃダメだってわかってる。 だけど、この4文字を伝えることが難しかった。 君と仲良く話す女の子、君は女子ウケがいいからモテモテで、私は選択肢にすら入れないのかな。 君は退屈になると男友達の集団に行ってしまう。私が話しかける隙なんてなかった。 下校中。仲の良い友達の帰り道は途中で分かれるので今は1人、トボトボ歩いている。 今日も話しかけられなかった。 友達は「明日また頑張ろう」なんて言ってくれたけど、明日もまだこのままだったら?そう思うと、この4文字を伝えられない自分が情けなかった。 たった4文字の言葉。目の前に見えて、届くかな?なんて思ったら沼に落ちてしまう。 君は何もしていないのに、私はどんどん君に溺れていく。 もう何度も失敗談を聞いた。彼には好きな子がいるっていう噂や、彼はそういうのに興味がないっていう噂も聞いた。どちらにせよ、希望は見えない。 グズグズしていたら、その子が彼に恋をしてしまうかもしれない。彼がその子に告白してしまうかもしれない。そんな怖い妄想が浮かんできて、目頭が熱くなってくる。 なんか、付き合ってもいないのに、なんで彼が幸せになることを拒んで、自分と付き合うことが前提にあるんだろう。 メンヘラみたいだな、そう思って、ちょっと自分が嫌いになる。 あーあーあーどんどんネガティブになる。 「ねぇ、楓?」 「え…うわぁっ優斗くん?びっくりしたー」 突然の彼の出現にびっくりする。噂をすれば、というやつかな。自分間で完結してるけど。 「な、何かな…?」 「いやさ、席替えしてから全然話しかけてくれないし、最近元気ないし、ちょっと心配になったっていうか…。あ、ごめん、変なこと言って。なんもないなら全然いいんだ。」 やっぱり彼は周りをよくみている。文章でこの会話を見てたら気持ち悪いかもしれないけど、現実だったら結構好印象だよ? 「んー、別に元気だよー。私と話すより友達と話したほうがいいでしょ?だから心配しないで。」 「えっ、俺、友達じゃないの?」 「……え?。え?え?あ、いや友達だよ、えっとそうじゃなくて、私よりも仲良い子いっぱいいるじゃん?」 なぜ彼がそれにこだわるのかよくわからなくて焦ってしまった。 「…ぶはっwハハッ。めっちゃ焦るじゃん。なんだ、そういうことか。楓は大切な友達だって。むしろ、いつも話しかけてくる女子って『友達』って目線で俺を見てない感じがして、利用されてるみたいで嫌なんだよね。あ、ごめん愚痴った。言わないでね。」 彼がそう思っていたことに驚いた。いつも女子と話す彼は楽しそうで、きっと遊びに行ったりする仲なんだと、勝手に決めつけていた。確かに彼は誰に対しても友好的だから、好きな人にアタックするために彼と仲良くする人もいるとは聞いたことがあったけど。 私の知らない彼がちょっとだけ見えた気がした。それと同時に、自分の世界の狭さを痛感する。 彼は『選択肢』なんて目線で人を見ていなくて、むしろそうしていたのは私たちだったのかもしれない。 「あのさ、恋バナね。優斗くんは好きな子いるの?」 「いきなりだな。」 「うん。いきなりだよ。」 彼はしかめっつらをして考え込む。そんな難しい質問してないけどな、YESかNOのどっちかいうだけなんだけど…。 「いる。ずっと前から。」 「マジで!?えーいいねー。誰誰?」 「…それは内緒。楓はいるの?」 まぁそうなるよね…。これってチャンスかな…? 「…いるよ。」 「だよね…。」 優斗のテンションが少し下がった気がした。 なに?なんで落ち込んでるの?え。君は一体何を考えてるの? もう、思い切って言ってしまおうかな。言って、すっきりしよう。 「ねぇ。聞いて?」 「え、何?」 「あのね…私、優斗くんが『好きです』。」 「…俺も!俺も好きです!」 「えっ、好き?え、えっ?」 「付き合ってくれるかな…。」 「…もちろん。私でいいなら。」 思いがけないことだった。『好きです』の4文字が伝えられればそれでよかったのに、まさか彼もだったなんて…。 この4文字に私が込めた想い、彼が込めた想い、そのそれぞれがお互いに届いて、今がある。 彼の想いを、私の心に大切にしまっておきたいと思った。 この体が朽ちようと、この想いは、4文字の想いは消えることはない。