パラレル
「prler(パラレル)の世界へようこそ」 アプリを起動した瞬間、世界が変わった。現実のように見えるが、現実ではあり得ない光景。私の写真を元に作ったアバターと五感を共有して、自由自在に動き回る。ここは……楽園だ。 私、灰武 弥生はいわゆる不登校だ。きっかけは好きな人の前で自分の得意だった歌をバカにされたこと。あの日から、世界の色が消えた。そんな時にネッ友から紹介されたのがprler。自分の写真を元に、アバターをアプリが作ってくれた。最初に見た時は本当に自分かと疑いたくなるほどに美人でびっくりした。 「名前は……シンデレラだからela。」 ここでの私はシンデレラ。魔法が解けた瞬間、また灰武弥生に戻ってしまう。「あ、やよぃ!」「ヤッホー桜!」 ネッ友を見つけたので手を振る。 「弥生ー。歌って。」「今ここで!?」でも、ここでなら歌えるかもしれない。「ら らららー。」 昔自分で作曲した歌を歌ってみる。声が驚くほど遠くまで澄み渡ってびっくりした。「すげー。」突然後ろから声が聞こえた。「俺、アキ。お前は?」「私はela。」「僕は桜!あ、一応女子。アキはelaのファン大2号だね!もちろん1号は僕!」 桜の言葉にふっと笑う。 「明日も、歌ってくれる?」「うん。」 世界が広がったような気がした。 「すげー。」 俺、アキこと上代 千晶は今、一人の少女の歌に吸い込まれていってる。…力強いけど儚い……そんな歌声。 ……一目惚れかよ。話してみたら彼女は思ったよりも明るい子だった。明日も歌を聞かせてくれるらしい。やった。 次の日、学に行くと校最近不登校だった灰武弥生さんが来ていた。珍しいなと思いつつも特に何もなかったので少し話したくらいだった。話しかけると、彼女は眩しい花のような笑顔で笑ってくれた。なんだかelaに似てるなあ。 今日。珍しく学校に行ってみた。そしたら昔から好きだった上代君が話しかけてくれたんだ!私にも優しいなんて本当にいい人。ウキウキるんるんでprlerにログインする。昨日の場所に行くと、アキはもう来ていた。 「ごめん!待った?」「ううん。全然。」「リクエストある?」「えーと。他に作曲とかしてない?」 リクエストに合わせて自分が作曲した歌を歌う。歌い終わると周りに人だかりができていた。 「アキ、この人たちは?」「elaのファンたちだよ。」 とりあえず手を振ってみる。大好きな歌で有名になれるなんて夢見たい! 私は毎日のようにログインして、アキにあって、歌った。歌うたびに聞いてくれる人が増えて嬉しかった。 ある日、桜から動画が送られて来た。見てみると数々の賞をとっている有名な歌い手さんが私のことを天才歌姫と紹介していた。すごい!自分じゃないみたい!今日ももちろんprlerにログインしてお気に入りの歌を歌歌う。 「アキ!やっほー!」「あ……。うん。やほー。」なんだか元気がない。「アキ、どうしたの?」 「ううん。なんでもない。」そう言う彼はやっぱり元気がない。「ほんとにどうしたの?」 「俺と桜だけでよかったのに。」「え?」「人気なのは嬉しいけど……。ちょっと悔しい。独り占めしたかった。」 「私は、アキが一番のファンだと思ってるよ。不登校だった私に光をくれたから。」そういうと、彼はくしゃっと笑った。その顔は上代君みたいで……ってそんなわけないか。 光という表現にほおが緩む。やっぱり灰武さんに似てるよなあ。笑い方とか、喋り方とか、声とか。 「ela。好きだ。」「え!?」気がついたら俺は告白していた。明らかに動揺している。 「言いたかっただけだから。じゃ。」 次の日ログインすると、elaはもう来ていた。珍しいな。 「ごめんなさい!私、他に好きな人がいるの!」振られた。けど、なぜか笑いが込み上げて来た。「ううん。大丈夫。」 真摯に答えてくれるなんて本当にいい人だ。「ううん。ありがとう。」初恋は3ヶ月であっけなく散った。 昨日、アキに告白された。正直嬉しかったけど……私は上代君が好きだから断った。学校に行くと、上代君は少し暗かった。「上代君。どうしたの?」「あ、昨日フラれて。」そんな偶然ってあるんだ。世界は広い。 「上代君。好きな曲ある?」「あ、elaの曲が好きで。」私の曲!なんだか恥ずかしいや。せっかくなので新曲を歌う。 歌い終わると、なぜか上代君はびっくりしていた。「それ、まだ出てないよね?オレ、elaの曲は全部聴いてるんだけど……。声も似てるし、もしかしてela?」「え?アキ?」「マジで。elaなの?」え?私、自分の好きな人振ったの? 驚きの事実だ。「アキ、ううん。上代君。好き。」 「prlerの世界へようこそ」 今日もまた、だれかがログインするそこでは、天才歌姫と、イケメンプロデューサーが、仲睦まじくライブを開催しているらしい。