遠くに見えて、近いもの
人が次々と死んでいくミステリー漫画。 連日報道される殺人事件。 簡単に「死ね!」などと発言してしまう子どもたち。 「死」という言葉は、意外と身近にありふれている。 いま生きている人たちはまだ誰もそれを経験したことが無いはずなのに。 みんなも「死」という言葉をよく耳にする反面、どこか自分には関係ない、遠い未来の話だと思っているのではないか。 私も、前は薄々そう思っていた。 人はいつか死ぬし、明日何かで死ぬ可能性もあるということは、頭ではわかっていたつもりだった。 ーでも。 昨日突然、親友のりほが、交通事故で亡くなったのだ。 何の前触れもなく、急なことだった。下校中に、飲酒運転の車にひかれたらしい。 それを初めて聞いた時、何かの映画のシナリオを見ているような気分だった。 なんだか話の内容が頭に入ってこなくて、足元がふらふらした。それに、全く実感がなくて涙も出ない。 もう、りほは、いないんだ。 頭では理解しているけど、心がその事実を受け付けない。 今でも、まるで遠くで起こったニュースを見ているかのような気分。 明日も学校に登校すれば、いつもみたいに「おはよ!」って声をかけてきてくれると、心のどこかで思ってしまう。 ー数日後。私はほとんど状況をのみこめないまま、お葬式の日になった。 お葬式はできるだけ最低限の人数でやると言っていたから、りほの親族以外はほとんど来ていない。私はここにいていいのか、とすら思った 身にまとっている黒い服が、なんだか重たく感じた。 りほは、確かに私の親友だった。 親友になろう!と言ったわけではないけど、きっとりほもそう思ってくれていた。 同じクラスになったときは泣いて喜んで、いつも一緒で、家に帰ってからもよく電話していた。 一緒の高校に行こうねと約束し、放課後2人で勉強を教えあっていた。 色違いで買ったおそろいのキーホルダーは、今も大事ににかばんにつけている。 口下手な私がこんなに心を開けたのは、りほだけだった。 きっと今までも、これからも、親友はりほだけだって、胸を張って言える。 「そろそろみんな座って~」 りほのお母さんの声が聞こえた。 私は、近くにあったイスに座った。 私は、台の上に大きく飾ってあるりほの写真を見た。 その写真のりほは、笑っていた。まるで、天使のような優しい笑みだった。 もう私も、現実逃避ばかりしていてはいけない。 いつまでも意地を張っていては、りほにも申し訳ない。 ーりほは、もういないんだ。 りほの写真を見たとき、なぜか素直そう思った。 今までは、ずっと受け入れられなかったのに。 そして私は、無意識に一筋の涙がこぼれた。 それをきっかけにどんどん涙の量は増え、しだいには声を立てて泣いた。 あまりにも私がわんわん泣くので、周りの人たちがかけ寄ってきた。 やっと。やっと私は、りほのいない世界を受け止めれたのかもしれない。 ーりほ。私は、りほがいなくても頑張るよ。 心の中で、そっとつぶやいた。 「死」は、どこか遠いものだと思っていた。 だけど、私たちの「死」は近くに潜んでいる。 みんな簡単に「死ね!」という言葉を使ってしまうし、人が次々に死んでいくような漫画も多くある。 今これを見ているそこのあなたも、頭ではわかっていても、どこか死は遠い未来の話だと思ってしまっているかもしれない。 でも、違うのだ。 今あなたがナイフを手に取り首に押し付ければ、死んでしまうだろう。 それと同じで、人って簡単に死んでしまう。 もう一度、考えてみてほしい。 りほのように、明日本当に、死ぬかもしれないということ。 死は、遠くに見えて近い。