かっこいい僕とかっこいい君
僕・出間遊羽(いずまゆうわ)は、訳あって女装してます。 うちの家系では成人するまでの男の子は不幸になると言われている。 だから、男の子はみんな女装するらしい。 僕は女装をしているせいで、「キモい」とか「キツイ」とか言われる。 しょうがないじゃんか。 僕だって…やりたくて女装してるんじゃないよ… (今日から中学生…) 「…なぁ…あの女子可愛くね?」 「うっわマジだ!美少女やん…」 …僕を初めて見る人はそう言う。 でも、僕が男子だと知った瞬間に敵に回る。 どうせ中学でもいじめられるんだろうな… 「ねぇみて!超イケメンいるんだけど!」 「ほんとだー!めっちゃかっこいい…」 女子たちが小声で話している。その女子たちの目線の先には… (!うっわ…めちゃくちゃイケメン!) サラサラのショートヘア、高い身長、キリッとした目つき。 見惚れてしまって、少しだけ見つめてしまった。 すると一瞬だけ目があって、僕は目を背けた。 彼の綺麗な瞳を見て、少しどきどきした。 「おい、女男」 「キモいんだよそのウィッグ。取れよ」 …ほらね。こうなった。 そして殴られる。蹴られる。叩かれる。 痛いなぁ… 「やめろよ」 僕を庇うように前に立ったのは… あの例のイケメン・伊藤夢叶(いとうゆめと)くんだった。 「正直ダサいよ。弱いものいじめ」 「あ、ありがとう。伊藤くん…」 「夢叶でいいよ。つか、怪我大丈夫?」 「うん…」 改めて見ると、やっぱりかっこいい。 …でも、なんか違和感がある。 長いまつ毛、丸っこい輪郭、髪の毛の生え方。 「…女の子…?」 思わず呟いてしまった。 でも、その一言に夢叶くんはびっくりしていた。 「…よくわかったね」 そう呟いてどこかへ行ってしまった。 夢叶くんと隣の席っていうのがなぁー… 注目されちゃうからなぁ… あれから夢叶くん、なんにも話してくれないし… 「今日は身体測定の日です」 先生がそう言った。 (身体測定…身長低いから嫌なんだよなー…) 「それでは、男女に分かれて出席番号順に並んでください」 先生にそう言われ、クラス全員が動き始める。 (…あれ) 女子の方に目をやると、夢叶くんが並んでいた。 「…はぁ!?おい伊藤!お前こっちだろ!」 「お前女なのか!?」 男子たちが揶揄うように言う。 すると、夢叶くんは少し黙ってから言った。 「…うち、女だけど」 「なんでよ夢叶くん!?」 「騙された…ほんと最悪」 休み時間、そんな女子たちの声が飛び交う。 「…んだよ。うち、男子なんて一言も言ってねーだろ」 「女子とも言ってないじゃん!変に期待しちゃったじゃん…」 …なんか、僕に似てる気がする。 こうやって、誰かに色々言われるの… 「そっちが勝手に期待しただけだろ。うちはこの格好が好きだからこの格好なの」 “好きだから” その言葉で、少し胸がギュッとなった。 そっか、僕とは事情が違うんだ… 家の鏡の前で、ウィッグを外す。 鏡に映ったのは、ショートヘアの男の子だった。 でも、ウィッグを被れば女の子。 …僕は、好きだからこの格好なんじゃない。 本当は、かっこいい方が好きなのに… 「…出間、お前その格好好きなの?」 夢叶くんがきいてきた。 「そんなことないよ。僕は…かっこいいのが好き」 そう言うと、夢叶くんは聞き返してきた。 「じゃあなんでその格好なの?自分の好きなものを好きでいる方が良くね?」 (…何言ってんだ。君は、好きなことをしていじめられてる。僕は…) …あれ? 僕、好きじゃないことをしていじめられてる。 なにそれ?理不尽すぎない? 僕だって…好きなことを… 「…ありがとう、夢叶くん。目が覚めたよ」 夢叶くんは驚いて、そしてふっと笑った。 次の日、僕は教室に入った。 みんな驚いていた。…そりゃあそうだろう。 ウィッグを外してるからね。 「なんだお前…色々言われて心折れたか?」 「違う!僕は…この格好が好きだ!」 不幸にならない方法で不幸になるなら… 好きなもので幸せになる方がいい。 教室が静まり返る。 冷や汗が僕の頬をつたった。 「ひゅーっ。かぁっこいいねぇー」 夢叶くんが、にやっと笑いながら言った。 その笑顔に、救われた気がした。