短編小説みんなの答え:1

ガリ勉は互いに恋をする

ほんのりと甘い風を漂わせていた春は、あっという間に過ぎていき、今ではセミの暑苦しい音に、夜はコウロギの静かですずしい合唱が聞こえるようになってきた夏。 そんな中、私は今、一人でのんびりと勉強をしていた。 真夏でギラギラと暑苦しい太陽が輝いている外に比べ、冷房により涼しくなっている部屋はカーテンも閉められており薄暗く、唯一机を照らしている小さなライトだけが一生懸命に部屋に光を放っている。 かれこれ4時間も勉強をし続けていた私は、シャーペンを握って痛み始めている右手の中指を見て、流石に息抜きをしようと図形や表、文章でまとめられたノートから目を離し、カレンダーを眺める。特に予定も書き込まれていないカレンダーには、とある日にちだけ赤マルで囲まれており、『入試!』と大きな文字でその日の枠はいっぱいいっぱいに埋まっていた。 現在中学3年生、星野綺羅羅(ほしの きらら)。勉強は得意でもなければ苦手でもない、普通だ。好きなわけでもなければ、嫌いなわけでもない。とはいえたしかにめんどくさいのは事実である。それでも私がこんなに勉強に打ち込む理由。それは彼、新海優夜(しんかい ゆうや)と同じ高校に入るためだった。 別に彼とは恋仲なわけでもなければ、親しい友達なわけでもない。 特別仲良く話したこともなければ、一緒に遊んだこともないし、そもそも彼が私のことを認識しているのかすらわからない。 それならばなぜ、私がこんなにも彼に執着しているのか。 それは、私が彼を一方的に好いているからだ。まぁ一目惚れというやつである。 一目惚れをしたのはいいものの、結局その後全く話しかけることすらできずに、あっという間に中学3年生になってしまった。 特に入りたい高校もなかったため、せめて同じ高校に入ったら見てもらえるようになるだろうかと思い、たくさん聞き耳を立てたりして情報を集め、ようやくわかったと思えば、その名前に驚愕してしまう。 △△高校。誰しもが聞いたことのある偏差値70超えの超名門校。 彼は元々勉強面が優秀だったし、きれいにノートを取っていたため、よく廊下に掲示されたりしていた。彼なら十分な学力があるし、入学するのも簡単だろう。 ここで諦めてしまえばもう彼には会えないかもしれないと思い、両親に△△高校に行きたいと意思表示をしてから5ヶ月、毎日勉強をし続けている。先生からも成績が上がってきていると褒められるようになってきたし、私のノートも廊下に掲示されるようにもなった。 テストの点数は毎回60から70点くらいだったのが、85から100点までぐーんと上がり、△△高校も夢じゃないと言われるようになった。クラスの人に勉強を教えてほしいなどと頼まれるようにもなって、学力は順調に伸びていったのだが…。 最近、何故か私よりも頭のいいはずの彼が、私に勉強を教えてほしいとねだってきたのである。 もちろん私は彼に好意を抱いているため、すぐにOKをして、放課後の解放された図書室で教えるようになったわけだが、私がいちいち教えなくても、彼はスラスラと問題を解いていく。勉強を教えてほしいとねだる必要性が一ミリたりともわからなかった。 それに加えて、私のシャーペンの動きが止まったら、すぐに見つけてわかりやすく解説をしたり、簡単な暗記の仕方などを教えてくれた。私が彼に教えているのではなく、彼が私に教えているという方が正しいのではないかというレベルだった。 それでも彼は何も言わず、スラスラとまた問題集をとき続ける。 一目惚れで同じ高校に行こうと思っている私が言えないが、変わった人だなと思った。 一体彼は何がしたいのだろうか。でもまぁもう少しだけでも一緒にいたいなぁと思う。 そんな今までの一連の流れを思い出した私は、何も言わずにまた勉強に取り組み始めた。 〈優夜視点〉 俺には一目惚れをした女の子がいる。 その子の名前は星野綺羅羅。気がつけば自然と目で追っていた。 特に目立つようなことをしているわけでもないけど、なんだか目を引かれるんだ。 勉強だけが取り柄で授業中に取った俺のノートが廊下に掲示されたとき、一生懸命に俺のノートを見ている彼女を見たときすっごく嬉しかったんだ。 でも一目惚れしたにも関わらず、なかなか話しかけられずに3年。 そんな中、彼女が俺と同じ高校を目指すと聞いて、チャンスだって思った。 勇気を出して彼女に勉強を教えてほしいと頼み、放課後に一緒に勉強をする機会を作ることができた。 一緒に勉強をすることで俺の学力を上げるのはもちろん、彼女の学力も上げられるので、一緒の高校に行くために色々教えてあげたりした。 俺の思いを伝えるのはもっと後になるだろうけど、いつか言えたらいいな…。 そんな事を考えながら、またノートに目を向けた。

みんなの答え

辛口の答え

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すごい表現力!!!

会話文が少なく、登場人物視点の気持ちがたくさんあるためとても感情移入しやすく読みやすい短編!また季節の表現の幅が広くコオロギの鳴き声を静で涼しい合唱とすることで秋が近い夏。すなわち受験生にとっても勝負所であることが明確には記載されていないのに情景として生々しく思い浮かぶ、そんな素晴らしい表現であると感じました。


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