短編小説みんなの答え:1

雪の降るあの夜に。

「千里ちゃん」 いつも貴方は笑っていた。笑う以外の表情を、見せたことがなかった。その日までは。 「私……死ぬんだって」 目を赤く腫らしながら告げたその一言は、私の胸に深く突き刺さった。 「千里ちゃんと……もう直ぐ、遊べなくなっちゃうんだって」 「なんで? なんで、友紀ちゃん……っ」 泣き虫だった私は、顔をくしゃくしゃにして泣いた。声を上げて泣いた。 「私がねっ、神様に、お祈りしてあげる。友紀ちゃんを連れていかないでくださいって……」 私がそう言ったら、貴方はいつものぱっと明るいひまわりみたいな微笑みを浮かべて、「じゃあ、遊べるね! 千里ちゃんと遊べるね!」と無邪気に喜んだ。 貴方は本当に、優しかった。 ハンカチをなくして、泣いていた私に、「ほら、これ、あげる」と自分のハンカチを渡してくれた。 返そうとしたら、貴方は、「いいのっ、あげるっ」と私の手に押しやってきて、「これね、私の大切なハンカチなの。だから、あげる。千里ちゃんが泣いてるから、あげる。あのね、泣いてたら、幸せが逃げていっちゃうんだよ。お母さんが言ってた。笑ったら、幸せがくるんだよって」と言った。 お母さんの形見だというハンカチを、私にくれたのだ。 それは今も、私の服のポケットの中にある。端がほつれたハンカチには、貴方との思い出がたくさんつまっている。 確か、あの日は雪だったね。 私が貴方と出会ったのも、雪の日。そして、貴方の名前は友紀。 私たちは、「ゆき」で結ばれてたんだね……。 ありがとう、友紀ちゃん。 ありがとう、ありがとう、ありがとう……。 貴方のおかげで、私は今、ここにいます。 貴方のことを、おもうことができます。 ずっとずっと、忘れないよ。 たった一人の、もういない、親友へ。初めてできた、親友へ。 私も少しは、大人になれたかな、友紀ちゃん。

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