父さん、ありがとう ~父の心~
僕の名前は亮太。小学6年生で、母と社会人の24歳の兄、佑太と20歳の姉、美咲希と4人で暮らしている。 物心ついた頃から父は家にいなかった。父に関することは一切なく、唯一残っているのが僕が赤ちゃんだった時の家族写真だった。 父のことを誰かに聞こうと思っても、教えてくれる人はいなかった。 僕に対する家族の態度は何か訳があるようで違和感があった。 兄は冷徹で、話しかけても返事すらしてくれないし、姉は僕に対して攻撃的で、話しかかけようともすれば、物を投げられたり、酷い罵声を浴びたりした。 母は普段は優しいが父の話をすると泣き出してしまい、話にならない状態になってしまった。 そのため、父のことを知りたい気持ちは山々だったが、そのせいで余計家庭が壊れるのが嫌だったから聞くことはできなかった。 そして今日、僕は12歳の誕生日を迎える。 「亮太 12歳のお誕生日おめでとう!!」 夕飯の後、母のその声と同時に自分でクラッカーを鳴らした。 「ありがとう!」 兄と姉も今日だけは同じ部屋にいてくれている。それだけでも、僕は嬉しかった。 すると母がキッチンから大きなケーキを持ってきた。 「食べよう、ほら、佑太も美咲希も席に座って」 「お母さん、そんなに大きいケーキどうしたの?」と姉が驚いて聞いた。 「今日は小学生最後の誕生日だもん。一つの節目として祝ってあげないと」 「…そっか。」 そう姉が言った瞬間、一瞬だけ3人が悲しそうな、寂しそうな顔をしたように見えた。 ケーキを食べ終わり、母からプレゼントを受け取った。 今話題の新作ゲーム機だった。 「もう一つプレゼントっていうか大事なものがあるの。これは亮太だけじゃなくて佑太と美咲希にも関係あるから真面目に見てほしい」そういうと母は隣の部屋からパソコンを持ってきて、 「これを見て」と言った。 画面は、見覚えのある30代半ば頃の男性が映っている動画だった。 「父さん!」兄が一番最初に反応した。 (父さん?) 動画を再生するとそれは、父からのお祝いメッセージだった。 『お久しぶりです。お誕生日おめでとう亮太。3人ともお元気ですか? この動画を見ているときは佑太は24歳で美咲希はちょうど20歳かな? 亮太は12歳の誕生日を元気に迎えられているかな? 3人にはちゃんとしたことをこの動画で伝えさせていただこうと思います。 まず前提として、パパはもうこの世にはいません。』 そう言って父は少し笑った。 僕はハッとした。きっと今日、家族の違和感がわかるのだと思った。それと、父にはもう二度と会えないのだと悲しくなった。 『なぜなら、自らの命と引き換えに亮太、君を救うことを決意したからです。 君は生まれた時から心臓が弱く、よく入院していたんだ。医者からは「このままでは亮太くんは一歳の誕生日を迎えることができない。」と言われたんだ。助かるためには心臓を移植しないといけなかった。でも移植するための心臓を待っている人はたくさんいて、亮太には今のままでは確実に間に合わない。だから、今回パパは亮太に最後の贈り物をします。パパの心臓を。 移植手術をしたところで亮太はよくならないかもしれない。だけど少しでも可能性があるなら、亮太の未来があるのなら、パパは亮太が生きるほうに賭けたかった。』 動画の中で父は泣いていた。そして笑っていた。 僕も、涙がとまらなかった。 気づいたら母も兄も姉もみんな泣いていた。 『そして佑太、美咲希へ。いきなりいなくなってごめんなさい。ママから2人には伝えてもらったとおもうけど、特に美咲希はパパの事大好きだから寂しい思いさせたかも。佑太も、もっと遊びたかったよね。長男として厳しかったよね。ごめんね。まだ小学生なのに、大切な時に近くで支えることができずに本当にごめんなさい。2人はもしかしたら亮太を恨んでいるかもしれない。でも決して亮太を責めるようなことはしないでほしい。どうしても、恨みたく責めたくなったら、亮太の一部にパパの心があると思ってほしい。 あと、ママ。百合子。相談した時もずっと支えてくれてありがとう。これから辛い思いをさせると思うけど、今日までこの動画を子供たちに見せない約束を守ってくれてありがとう。皆、いつかまた会おう。4人とも愛してるよ。』 それで動画は終わった。 ー数週間後ー あの後は大変だっった。 何時間も皆で泣いた。今は兄と姉とも和解出来てて、毎日楽しい人生が始まってる。 これからは家族全員で今までの分も含めて人生を楽しみたいと思う。 この先、たくさんの壁があると思う。だけど大丈夫、だって僕の心の中には、父さんがいるんだから! 雲一つない青空に向かって 「父さん、ありがとう」と叫んだ。 初の短編小説だったのですが、どうでしたか? 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。