キューッピドが恋しちゃだめですか?
この学校には恋を叶えてくれるキューピッドがいるらしい。 裏庭の石の前で恋の願いを伝えるとキューピッドが出てきて願いを叶えてくれる。 そんな噂が最近流行っていた。 「…ここか。」 俺、天野樹(あまのいつき)は迷信なんて信じない。 なのに来てしまった。 たくさんライバルがいる中で地味な俺はどう頑張ったって恋は叶わない。 キューッピドの噂を聞きやってみるだけやってみようと思い来たのである。 「…よし、やるか!」 石の前に立つ。 「あの~どうも。2-Bの天野樹です。同じ学年に好きな人がいます。その人と付き合いたいです。俺の恋を叶えて下さい!」 願いを言った瞬間… ピカッ! 石が光り輝いた。あまりの眩しさに目をつむる。 目を開けると… 弓を持ち羽の生えた幼い女の子が目の前に立っていた。 年齢は小学校低学年くらいだろうか。目はぱっちりとしていて深く青い瞳に吸い込まれそうだ。 まつ毛は長くくるんと巻いている。 肌が雪のように白く、その特徴に 「かわいい…」 と言わざるを得なかった。 「かわいいってことぐらい知ってるもん!」 …喋った! キューッピドって嘘じゃなかったんだ… 驚きのあまり話せずにいると 「天野樹くん、こんにちは!私はみんなの恋を叶えるキューッピド、えみるでーす!」 そう言ってキューピッドえみるはくるっとターンしウインクした。 「え、本当に本物?コスプレとかじゃないよね?」 「失礼な!私は天界の命令でこの学園創立当時からいる学校の恋の神であるぞ!」 キューピッドが怒り出した。 まずい。機嫌を損ねたら願いを聞いてくれない! 「ごめんなさい!キューッピドとか見たの初めてで…。今日はお願いがあって来ました。僕の恋、叶えてほしいんだ」 「待ってました!恋のお悩み!相手は誰なの~?」 キューピッドが好きな人はどんな人なのか見せて欲しいと言ってきたため 好きな人の後を尾行している。 「へ~あれが好きな人なんだ。結構な美人さんだね。樹くんには無理なんじゃない?」 えみるの言うとおりだ。地味な俺なんて… 「…そうですね。なんてったって彼女は高嶺の花なので僕には手の届かない存在です…」 彼女は学年一の美人と言ってもいいほど名高い本宮沙良(もとみやさら)。 一年のとき同じクラスだった。理科の実験でペアになった時、些細な会話で笑ってくれた。 「今日の先生の服米粒ついてるね」とか… こんなしょーもない会話に笑ってくれる本宮さんの明るい笑顔に俺は好きになった。 二年になってクラスが離れて、全く接点がないけれど… 「なるほど。叶わない片思い、かぁ…」 えみるは切なげな表情で本宮さんを見ていた。 「あ、本宮さんが3年のフロアに!」 慌てて後を追う。 本宮さんは3年の男の人と話していた。 そして二人は仲よさそうに会話しながら歩いて行った。 楽しそうな本宮さんの笑顔。 すごく生き生きとしていて恋する乙女の表情って感じがした。 本宮さん、好きな人いるんだ… でも、本宮さんに向かって矢を放ってもらえれば本宮さんの気持ちを変えられるんじゃ… 「ねえ、えみる。本宮さんに矢を放って」 「嫌だ。」 「え…どうゆうこと?」 えみるの言葉に頭が真っ白になった。 「自分の事を好きじゃない人と無理やり気持ち変えさせて結ばれて樹君は嬉しい?」 えみるの言葉が重くのしかかる。 確かにえみるの言うとおりだ。 好きじゃない人と結ばれてそれは本当の幸せと言えるだろうか? 俺は…好きな人には幸せになってもらいたい。 「えみるありがとう。本宮さんと付き合うなんて考えた俺がばかだった。第一俺と本宮さんじゃ釣り合わないよな」 「本当は、そうじゃないの」 どうゆう意味?俺はえみるの顔をまっすぐ見つめた。 えみるも上目遣いであざとく俺を見つめる。 「私が樹君のこと好きになっちゃったから、誰にも渡したくなかったの。いつも恋を叶えてばっかりだけどキューッピドだって恋したいもん!」 そう言ってえみるは俺に向かって矢を放った。 えみるの顔はいたずらな笑みをうかべつつ笑顔がどうしようもなくかわいくて恋に落ちずにはいられなかった。