理不尽な世界
この世は理不尽だ。昔から悪いことがあれば良いことがある、とか言われているが、そんなの嘘だ。悪いことなんて悪いこと続き。いいことなんて滅多に起こらない。今は第二次世界大戦中。日本はとてもだが余裕なんてない。私は夫も子供もいる。夫は、そんな中戦争に駆り出された。本音は戦争に行ってほしくない。でも、たった1人の発言で、それを食い止めれるわけでは決してない。そんな言葉が無駄であるとわかっていながら、私は嫌だ嫌だと叫び続けた。そんな私を、夫は「必ず生きて帰ってくるからね」と、大きい手で私の頭を撫でた。慰めた。子供は幼かったから、そんな私を悲しい顔を向けることもなく、見つめ続けた。夫が戦争に行ってから1日が経った。戦争に行ったのだからたった1日で帰ってくるはずもないのに、私は座ったままずっと灰色の空を見続けた。まるで空は私の心境を語っているようだ。子供は幼いにしてその気持ちを察したのか、私の頭を小さい手で撫でてくれた。この子はなんて大人なのだろうと、自分の子供に思った。私は少し元気が出た。 夫が戦争に行ってから一年が経った。子供は、4歳になった。夫に似たこともあって、とても美人でべっぴんさんだ。と、親バカのような思考に至る。 タッ…タッ…タッ… 外から足音が聞こえた。私は何気なく外を見た。そこには戦争地から帰ってきた夫の姿があった。私は目を見開いた。何も思うことなく、ただ無我夢中に夫に抱きついた。涙がポロポロと、溢れ出してきた。「…おかえり。」私はそう告げた。「…だから言っただろう?生きて帰ってくるって。」夫はそう告げた。 建物の中から、娘が顔を出した。「お、立派に育ったな!パパに似てべっぴんさんだなぁ…」と、嬉しそうでもあり、どこか悲しそうでもある顔で言った。普段無口な娘が、口を開いた。 「ママ、パパがどこかに行ってる途中、ずっと変だったよ。ずぅーっと空を見上げてたり、悲しそうな顔してた。私、大変だったよ。ずぅーっと慰めてあげてたんだからね。ママね、頭を撫でると喜ぶんだよ。」娘は言った。 夫は涙を流しながら、「そうか。お前は俺の性格までも似たんだなぁ」私は娘の言葉を聞いた瞬間、先程まで以上に涙を流した。立派に育ったね。この1年間、役立たずでごめんね。 この世は理不尽だ。昔から悪いことがあれば良いことがある、とか言われているが、そんなの嘘だ。悪いことなんて悪いこと続き。いいことなんて滅多に起こらない。 でも私は、この瞬間、その滅多に起こらない嬉しくて、楽しくて、幸せな瞬間を、大切に噛み締めていこうと感じた。