夜、二度と会えないはずの君に、会った。
私の唇に、彼の唇が重なった。 私が顔を赤くしてると、彼はにっこり笑った。 「そういう恥ずかしがってるところも、結衣の可愛いところだよね」 結衣(ゆい)っていうのは私のこと。 彼は付き合ってから、毎日必ず「可愛い」って私に言う。 嬉しいけど、やっぱりめちゃくちゃ恥ずかしい。 付き合い始めて1年だけど、まだこの「可愛い」には慣れない。 深夜0時。 誰もいない公園のベンチに座っている私と彼。 昼間は春風が気持ちいいけど、夜は少し肌寒いな。 そう思ってたら、彼が私をそっと抱きしめた。 平均より小柄な私と、上背があってしっかりとしている彼のおかげで、 私は彼にすっぽりと埋まってしまう状態だ。 彼の胸に顔をうずめると、トクン、トクンと彼の鼓動が速く動いているのが分かった。 (いつも普通にやってる事なのに、案外緊張してるんだ‥‥) そう気づくと、自分の心臓もバクバク鳴った。 ふと、私が彼の顔を見ると、 彼も私の顔を見た。 数秒間、見つめ合う時間が続く。 しばらくして、彼がニコッと笑って、私の髪を撫でた。 「‥‥大好き」 私がぽつりとつぶやくと、彼の私を撫でる手が止まった。 「‥‥僕も」 彼の恥ずかしそうな声。 ――――その瞬間。 ピピピピ‥‥目覚まし時計の音。 「絢斗(あやと)くん‥‥」 夢から現実世界に引き戻された私は、彼‥‥絢斗くんの名を呟いていた。 亡き彼の名を。