死者との電話
僕の街ではこんな噂がある 『丑三つ時にある公園の公衆電話に死んだ人の電話番号を打つと会話ができる』 ただし、命と引き換えに 「そんなバカな」と普通の人なら言うかもしれない けど、僕は信じてる 今日僕はその公園で電話をするつもりだ 相手はお姉ちゃん 事故で死んじゃった 事故の内容は転落 川にかかる橋の横の錆びた棒を渡ろうとして落ちた お姉ちゃんがそんな危険な所を通ろうとしたのは僕がそこを通ってその先の崖で死のうとしたから 目の前でお姉ちゃんは落ちていった ―お姉ちゃんはきっと僕を恨んでいるだろうから 僕は電話でお姉ちゃんに謝って結果がどうだろうと死ぬつもり 現実に裏切られ続けて慣れてしまった 生きている価値が無いんだ 公衆電話を見つけた 早速、受話器を取ってお金を入れた 電話番号を打つ手が震える 「プルルルルル…プルルルルル」 ―ガチャンッ 「…もしもし」 …本当に、繋がった 紛れもなく、お姉ちゃんの声だった 「…お姉ちゃん、あのね僕…謝りに来たんだ、僕のせいで死んで、なりたかった獣医にもなれなくなって…全部僕が奪って…恨んでるでしょ?だから謝って、殺されにきたんだ」 …返事は無い、だけどお姉ちゃんと電話は繋がった、噂通りならこのまま死ねるはず 「―許さない」 「…お姉ちゃん?」 「―許さないわよ…勝手に死ぬなんて、絶対許さない!」 突風に突き飛ばされて公衆電話から追い出された 背中を抑えながら公衆電話に目を向ける ―ガチャンッ そこには…公衆電話のボックスの中にはお姉ちゃんがいた ぶら下がった受話器を電話の横にかけ直した後にこっちを見た 笑ってくれた …口が動いてる、けど声が聞こえない…なんて言ってるんだろう し…ぬ…こ… 『死ぬことに余生を費やすな、お姉ちゃんが心配するでしょうが』 「――!」 お姉ちゃんらしい言葉で泣いてしまった 涙がこぼれる度にお姉ちゃんとの思い出が浮かんできて余計に悲しくなる だけど、お姉ちゃんの言葉を聞いてから前向きになれた気がする もう、大丈夫 次の日、お姉ちゃんのお墓参りに来た 線香とお花を添える お姉ちゃんのお墓に手を合わせる 「行ってきます、お姉ちゃん」 去っていく男の子を見送る様に、線香の煙が揺れた