秘密の芸能活動
「ねぇねぇ、透菜(すな)。昨日、投稿されたすなちゃんの動画、見た?」 「うっ、うん。まぁ……」 私は、透菜。高校1年生。今は、学校の休み時間で、同じクラスの友達・琉愛(るあ)とおしゃべりをしている。 「あとさ、最近、すなちゃんの追加メンバー募集があったでしょ?私、それの最終面接のとこまで行けたの!!凄くない!?この試験に合格すれば、すなちゃんと一緒にゲーム実況できるんだよ!?明日、オーディションの結果が来るから、楽しみ!!」 「へっ、へぇ~。凄いね……」 私は、そう、曖昧に返事をしておいた。 夜。私は、自分の部屋にあるゲーミングチェアに座った。ヘッドホンをつけ、マイクの設定をしたら……。 「みなさんこんにちは~!すなです!」 そう。実は、私は、かの有名なゲーム実況者、“すな”なのだ。小さい頃からゲームが好きで、猛反対した両親を説得し、中学1年生の頃から、YouTubeでゲーム実況動画を配信し始めた。そしたら、思いのほか人気が出て、チャンネル登録者数は200万人まで増えた。今では、「ゲーム実況者のすな」を知らない人はいないと言っても過言ではない。 高校に入学してから初めてできた友達・琉愛は、ゲーム実況者のすなの大ファンで、毎日、休み時間になると、その話ばかりするのだ。しかし、琉愛は、ゲーム実況者のすなが私だということに気づいていない。正体を秘密にしている私としては、友達にそんなに自分のことを褒められても、どう反応していいのかわからない。 「今回は、先日、募集した追加メンバーの発表をします!」 私は、手元に置かれた封筒から、1枚の紙を取り出した。この紙は、オーディションに合格した子の名前やプロフィールが載っている。私は、紙を見て、ぎょっとした。なんと、紙に書かれた名前は、「杉山琉愛(すぎやまるあ)」だったのだ。杉山琉愛、私の友達の、あの琉愛だ。琉愛の芸名は、「るあ」。私と同じように、本名をひらがなにしただけなのだろう。 「追加メンバーは……るあちゃんです!!るあちゃん、おめでとう!!では、早速だけど、簡単に自己紹介をしてね」 私がそう言うと、芸能事務所の方で待機していたるあちゃんが、マイクに向かって話し始めた。 「初めまして、るあです!私も、みなさんと同じ、すなちゃんのファンで、ずっと、すなちゃんとお仕事をすることを夢見ていました。今、こうして、すなちゃんやすなちゃんのファンの方々とお話しできて、とっても嬉しいです!これから、よろしくお願いします!」 その後は、少し雑談をして、今日の動画撮影は終わった。 「すなちゃん、お疲れさま!私、こうして、すなちゃんと一緒にお仕事ができることになって、すっごく嬉しいの!!これから、よろしくね!」 私は、そう、明るい声で言う琉愛に、どう答えていいのかわからなかった──。