短編小説みんなの答え:2

劣等生の、誰かを幸せにする魔法。

「恥ずかしくないの?こんな初級魔法も使えなくて」 「少しはセーラを見習いなさい」  いっつもそう言われる。  セーラは優等生だ。彼女は、ほとんどの魔法を操る天才少女だ。  やっぱり、私は魔法が使えない。 「…よければ、お教えしますか」  セーラだった。学園1の魔力を持っている、天才―。 「あんたには、私の気持ちなんかわかんないでしょっ」 気づいたら、そう言っていた。 「そんなこと言わないでください。あなたは…」 「話しかけないで!」 もう、自分の意志とは反していた。そんなこと言っちゃダメだ、なのにどうして…。  私は、彼女の顔を覗いた。魔力を秘めた赤い瞳が、彼女のつけた炎を反射して、一層赤く揺れていた。  その日の夜、学園を怪物が襲った。  恐ろしかった。 「皆さんは逃げてください!私が気をそらします!」  セーラは火の中で叫んだ。  最後まで優等生だ。将来有望な魔女なんだ、彼女は。私より価値がある。  私は逃げた。本当に弱い奴だ。  翌朝には、一切の騒動が消え失せていた。  すべての魔法を心得た大魔女様たちが、怪物を追い払ったそうだ。  だが。  セーラは、行方不明になっていた。  セーラを見つけた。 「…セーラ?」 目に、大きな傷がついていた。身体中ぼろぼろだ。  目は、魔女の命。すべての魔法が、瞳に宿る。  彼女は、視力と魔力を同時に失った。 「…ここは?」 「森の中。セーラは、戦って負けた」 「私は、セーラというのですか…?」  静かになった。  この魔女は、記憶さえも失ってしまったらしい。 「…ごめんなさい、ごめんなさい。私が助けられたなら…!」  私は泣いていた。私が、この人の未来を奪ったような気がしたからだ。 「…あなたは、優しいひとですね」  手探りで、私の頬を触った。 「まるで魔法みたい…」  魔法は使えないですよ。そう言うのはやめた。  彼女が魔法と信じるなら、それでいいんだ。 「あなたのような魔法使いがいるのなら、とてもこの世界が平和なんですね」  彼女が魔法を使う日は、もう二度と来ないだろう。  でも、幸せならそれでいいと思えるようになれた気がする。

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