明日やろうは馬鹿野郎
いつも歩いている道。 だけど一人だと、こんなに寂しいのか。 私が登下校するときには、いつも幼馴染の奏斗が隣にいる。 別に、特に仲がいいとか、付き合っているとかいうわけではない。 家が近かったので、小学校に入学したとき、危ないからはじめのうちは2人で登校しなさいと親に言われていた時の名残だ。 今はもう中3だから、別に2人で並んで行く必要なんて全くない。 だけど、なんでだろう。 別に一緒に行く理由もないけど、別々に行く理由もないのでずっと一緒行っている。 奏斗と今日あったことや昨日のテレビの話とか、話の内容はしょうもないことばかり。 でも、案外私はこの時間が好きだったりする。 もう8年も一緒に登校しているからか、奏斗と話していると落ち着く。 まるで家のような安心感だ。 それに、クラスの子と話すときはつい気をつかってしまうけど、奏斗になら気楽に話せる。 奏斗は、一緒に登下校するだけで、友達でも何でもない。 でも、それぐらいの距離感が、私は好きだった。 だから、その関係を壊したくなくてずっと言えなかった。 私が奏斗を、好きだということを。 状況が一変したのは、ちょうど1週間前のこと。 奏斗に、彼女ができたらしい。 いつもと何も変わらない登校中。 「俺、彼女できたんだ。」 小さな声で、奏斗がそう言った。 もちろん、驚いた。 だけど、私は「おめでとう!」と言った。 言ったというよりかは、思ってもないのに勝手に口から出てきたのだ。 私は、ひねくれ者だった。 素直に喜ぶことができなかった。 もう終わってしまうのか。 8年間の思い出が、走馬灯のように脳内を一気に駆け巡った。 どれもしょうもないけど、楽しい思い出ばかりだ。 彼女ができたんなら、私なんかと一緒に登下校はしないだろう。 奏斗が彼女報告をした後、学校につくまで私たちは一言も話さなかった。 8年間一緒に登校していて、はじめて気まずいと思った。 奏斗には何でも気軽に話せて、家のような安心感があった。 だけど。 今隣にいるこの人は、まるで知らない人のように思えた。 「またね」 下駄箱に着いたとき、奏斗はいつものようにそう言った。 私たちはクラスが違うので、ここからは別々だ。 「またね」 私も真似てそう言った。 もっと、はやく告白してフラれておけばよかった。 ずっと、後回しにしていた。 「明日やろうは馬鹿野郎」ということわざがあるのを、なぜか思い出した。 まさに今の私だ。 「奏斗、どうか幸せで。」 自分でも聞こえないくらい小さな声で、そうつぶやいた。 やっぱり、私はひねくれものだ。