短編小説みんなの答え:1

CHILDHOUSE!

私は石村なな、大学一年生、一人暮らし一年生。 至って普通の人で、挫折経験は一度あり、後は多少デコボコの人生を歩んできた。 今日は日曜日。大学は休み。 ずっと室内にいるのも体に悪いと思ったので、とある住宅街を散歩中。 何も考えることがなくなって仕方がなく空を見る。 …良い天気だなー 雲一つない晴天だ。 確かに今日は一日中晴れって言ってたな。 どうでもいいけどね… 「うぁぁぁぁぁあああああん」 何!? 私の横の家から飛び出してきた子がいる。 私が今散歩している住宅街に住んでいる子のようだ。 小学生低学年辺りかな? 横目で見ながらサーッと通り過ぎようとした。 「お姉ちゃ…ん」 って、あえ!? お姉ちゃん…って私の事指して言ってるの? 「お姉ちゃんって、私?」 「そう。助けて。」 「待って、何があったか教えて。あ、あのベンチに座って聞こうかな」 私は近くにあったベンチに座るように言った。 「…で、どうしたの?」 「お姉ちゃん、話聞いてくれるの?」 …ゑ あんたに話しかけられたから仕方がなく…、なんて言えるかい っていうか聞いて欲しいから私に話しかけたんじゃないの? いろんな事が頭の中で飛び回ったけどなんとか 「何かあったのかなぁって思って。」 と返答することができた。 「何かあったの。私の家の中で。」 そう言って女の子は話し始めた。 ―――私の名前は伊瀬まくら。この名前、変でしょ。あと、小学二年生です。 私が一年生のとき、生活科の授業で「自分の名前の由来を聞いてくる」っていう宿題が出たの。 家に帰って、私がお母さんに 「私の“まくら”っていう名前、由来教えて!」 って聞いたの。そしたら 「お父さんが付けたのよ。」 って静かに答えたの。 いつもは優しくて、面白いお母さんなのに。 私は自分の名前の由来を早く聞きたくてお母さんの顔色に気がつけなかった。 「ねぇ!お父さんってどういう思いでつけたのかな!お母さ」 「知らないわよ!!お母さんに聞かないでちょうだい!」 ちなみに、お父さんはすでに亡くなっていたの。 だから、私の名前は、分からずじまいだった。 次の日、学校に行って、怒られた。 自分の子供の名前の由来が、分からないわけないでしょう、って。 どうせ宿題をやるのを忘れてきたんでしょう、って。 その日から、お母さんは私に対しての反応が冷たくなった。 私は冷たくなったお母さんに会いたくなくて、自分の部屋に引きこもった。 一ヶ月ほどした頃、私はお母さんのいるリビングに行ってみた。 お母さんは 「まーちゃん(まくら)、ごめんね」 それだけ言って、私を抱きしめた。 今度はしっかりと気がついた。 棒読みに少しの偽りの感情を入れた言葉。 でも、もうお母さんに抵抗する気はなかった。 私の気がつきは間違いじゃなかった。 一年間、私を物のように扱い、ボロボロにさせた。 「まくら!スプーン取ってきなさい!」 「まくら!洗濯物はどこに置いたの!」 「まくら!まくら?まくら!まくら!」 ぁぁぁああああああああ!!何なのよ!あのくそババアがぁあああああ! 私の怒りが爆発した瞬間。 「お母さん!お母さんは私をなんだと思ってるの!」 「…何、いきなり。」 「お母さんの馬鹿!私はお母さんにとって必要な『人』なの!? それとも何、いらないただの『物』なの?どっちなの!?私はお母さんいらない!」 私ははっとした。い…言い過ぎた? 私がドキドキしていると、お母さんが言った。 「あなたは、いらないただの『人』よ。ガラクタ。」 冷たくて、鋭い目で私を見て、一言一言区切って、静かに言った。 私が爆発したときとは対称的に、冷ややかな時間が流れた。 「…私はガラクタなのね…。いらないただの『人』なのね…。」 「そうよ。」 私は、早足で部屋に戻った。 オカアサンニトッテ、ガラクタ、イラナイ『ヒト』… 涙が頬を流れる。 私は、この家に、必要とされていなかったのね――― 「ふぅぅぅぅん。そりゃあ大変。」 私は一通り話を聞き終わってため息をついた。 「そう。とても怖かった。どんどん、お母さんに侵食されていく感じが。」 とても二年生の話を聞いていたとは思えない。 「伊瀬ちゃん、家に帰るの?この後。」 「…」 どうやら、考えていなかったらしい。 「家には帰りたくない?」 「ん。」 「でも、」 家に帰らないとお母さんが心配するよ、という言葉をなんとか飲み込んだ。 そんなこと言ったら、家に必要とされていなかった事をまた思い出させちゃう。 「でもなあに?」 「あううんなんでもないよぜんぜん」 「…そっか。」 「そんな事よりも、家、どうするの?帰るの?」 もうすでに空はオレンジ色に染まり始めている。 「私の家来たら?」 私は決心した。苦しんでいる子どもたちを引き取ると。 ☆CHILDHOUSE☆

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