短編小説みんなの答え:4

また会う日まで…

───「2年間、ありがとうございました。」 中学校を卒業する2日前、勇気を振り絞って伝えたこの言葉とともに大好きな山田先生に手紙を渡した。もともと内気な性格で学校でもあまり目立たず、先生にとってあまり印象のないであろう私から手紙を貰っても迷惑なだけではないかと渡す直前まで緊張していた。でも、実際に渡してみると、とても喜んでもらえたことがすごく嬉しかった。  次の日、朝の会前の時間、教室に山田先生がやって来て私の名前を呼んだ。先生のもとまで行くと、2つ折りにされた1枚の紙を渡され、 「朝読書の時間に読んで。」 そう言われた。席について紙を開いてみると、それは手紙の返事だった。そこには、手紙を貰ってすごく嬉しかったこと、この手紙のおかげで『今日も明日も頑張ろう』と思えたこと、私の夢が叶うことを願っているということなどが書かれていた。返事を貰えただけでも嬉しいのに、私のことを思って書いてくれたのが伝わってきて、私は人目も気にせず涙を流していた。朝の会が始まっても、なかなか涙が止まらなかった。  そして迎えた卒業式。式の途中までははなかなか実感が沸かなかったけれど、だんだん寂しさがこみ上げてきて、卒業合唱では大粒の涙を流していた。その後の学級解散式でも、みんなで泣きながら担任の先生や学級のリーダーの話を聞いた。いよいよ解散となり、友達や先生との写真撮影が始まった。親友や担任・部活の顧問の先生と写真を撮った後、私は1番会いたかった人のもとへ向かった。 「山田先生、一緒に写真撮ってください!」 普段なら緊張してこんなに積極的になれないけれど、今日は違った。 「ハイチーズ!」 初めての大好きな先生とのツーショット写真。そこには、いつもと同じ、お母さんみたいな笑顔の山田先生と輝くような笑顔の私がいた。別れ際、 「高校でも頑張ってね。応援してるよ!」 そんな先生の言葉に泣きそうになりながらも、私は笑顔でこたえた。 「頑張ります!ありがとうございました。」 と。  それから2週間、私は毎日山田先生を思い出して、そのたびに辛くなった。いつのまに、私にとって山田先生の存在がこれほどまでに大きくなっていたのか。蓋をしようとしてもあふれてくるこの気持ちをどうすることもできず、ただ毎日が過ぎていった。 「先生に会いたいよ…。」 ずっとその一心だった。  そんなある日、友達から連絡が来た。 『今度の離任式、卒業生は参加自由らしいけれど行く?』 一瞬時が止まったように感じた。 「また先生に会えるの…?」 これが山田先生と会う最後のチャンスかもしれない。先生と話すことはできなくても、姿を見れるだけでいい。そう思った私はすぐに 『行く!』 と返事した。  そして、離任式当日。珍しく早起きをした私は、少し緊張しながらも学校に向かった。私が着いたときにはすでにたくさんの卒業生が集まっていた。みんな面倒臭がってあまり来ないと思っていたけれど、やっぱり今日が先生や中学時代の友達と会える最後の機会になるかもしれないからな。離任式の会場である体育館に入り、親友の隣に座った私は、すぐに山田先生の姿を見つけた。先生は他の先生と打ち合わせをしながら、忙しそうにしていた。卒業式では司会をしていたから、きっと今日も司会をするのだろう。そんな事を考えながら、私は大好きな先生を見つめていた。1、2年生がやって来て準備を終えると、山田先生の声で離任式が始まった。離任される先生がステージに上がり、一人ずつ、生徒に向けて最後の言葉を伝えていく。自分がもう卒業しているからなのか、大好きな先生は離任せずにこの学校にまだいるんだと分かって何故か少し安心したからなのか、離任式は意外にあっさりと終わってしまった。その後、卒業生はすぐに下校で、やっぱり山田先生と話すことはできなかった。それでも、姿を見れただけですごく嬉しかった。    帰り道、家までの道を1人で歩いていると、涙が頬を伝った。 「先生、もう会えないの…?」 今日で先生への気持ちも忘れようと思っていたけれど、そんなことはできなかった。でも、私は思い出した。それは、先生が私にくれた言葉や手紙だった。『将来の夢が叶うことを願っています。』『あなたの未来は希望しかありません!!』『応援してるよ!』 これを聞いたとき、「絶対に夢を叶えてみせる」そう決意したんじゃなかったのか。こんな大事なことを忘れるなんて。泣いている場合じゃない。このとき、私には新たな目標ができていた。 『いつか夢を叶えて、胸を張って山田先生に会いに行く』 ─目の前では、ミヤコワスレの花が風に揺れていた。

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