わたしじゃなかったんだね。
あぁ、わたしはずっと… 君の一番になりたかった。 「似合ってるよ」 そう優しく笑う君にわたしの口も弧を描く。 「そう?」 「うん。可愛い」 にやけそうになるのを必死にこらえて、彼がほめてくれたワンピースをレジに運ぶ。ワンピースなんて普段着ないけど、彼の言葉が嬉しくて、買ってしまった。 「はい、これプレゼント」 淡い光を纏う綺麗なペンダントをくれた。 「えっ…なんで」 「だって今日誕生日でしょ」 そう当たり前のように笑う君。 「え、だってそうゆうの覚えられないってこないだ」 「まあね。でもさすがに好きな人のは覚えてるし」 そう明るくすねたように笑う君にわたしの胸が高鳴る。 「あっ…りがと」 熱い頬を隠すようにそっけなくいうと、君は「つけるよ」と優しく微笑む。 私たちは順調だった。お互いに好きで、2人の間には笑いが絶えなくて。 沈黙してもそれすら心地よくて、お互いに尊重し合えて。 ありがとう、と感謝し合って。 同棲を始めてからも喧嘩はほぼなく、家事も分担できて。 わたしの体調が悪ければすぐに気がついて、看病してくれて。 落ち込んでるときは寄り添い合って。 でも、だんだん。 君がそっけなくなる。 LINEの返信が遅くなる。 電話にでなくなる。 ……そして君は、2人で選んだこの部屋に、帰ってこなくなる。 深夜、暗いなか、一人で君を待つ。 真っ暗で、終電も過ぎてて、それでも玄関で出迎えたくて、君を待つ。 ほんとは、どこかでわかってた。 この時期が繁忙期じゃないことも。 別に新しいプロジェクトがあるわけじゃないことも。 だから、終電を逃すほど残業する必要がないことも、してないことも。 でも、信じたかった。 別に君は意図的に帰ってきてない訳じゃなくて。 わたし以外の女の子といるわけじゃなくて。 わたしから、気持ちが離れた訳じゃなくて。 そう、信じたかったんだけどなぁ… 「別れよう」 そうわたしを突き放した君は、最後までわたしを見なかった。 嘘を重ねて、重ねて、重ねて。 最後にいった本当のことがこれなんて、あんまりだよ。 久しぶりに二人揃った部屋でする内容がこれなんて。 「そっ…か。わかった。別れよっか」 そう無理矢理絞り出した明るい声は掠れてて。 1度もわたしを振り返らないその背中は、今までで一番遠くて。 その背中が見えなくなったとたん、涙が溢れた。 大好きなのに。大好きなのに。大好きなのにっ… 今だって、つけてるペンダント。 今だって、大切なワンピース。 今だって、こんなに大好きなのに。 今だって、君のことしか、考えてないのに。 君は、ちがったんだね。 「こうゆう式憧れるよね」 そう笑う君が隣に描いていたのはわたしだと信じていた。 「可愛い」 君のその言葉はわたしだけに向けられるものだと信じていた。 「愛してる」 そう君が囁くのはわたしだけだと、信じていた。 今だって、君がわたしを抱き締めながら囁いた「愛してる」が忘れられない。 今だって、君がわたしに送ってくれた「大好き」が、ずっとずっと残ってる。 今だって、君がわたしを愛しそうに見つめるその姿が、脳裏に焼き付いてる。 いつから、だろう。 君のその言葉が嘘になってしまったのは。 いつから、かなぁ。 君のその言葉が嘘だと気づいてしまったのは。 いつまで、だった? 君のその言葉を純粋に信じられていたのは。 君が帰ってこない深夜の部屋で、一人きり。 2人のためにと選んだ部屋はわたし一人には広すぎて。 2人のためにと買ったテーブルはわたし一人じゃ埋められなくて。 2人のためにと悩んだベットは半分すっからかん。 今君は、いったい誰といるんだろう。 わたしに愛を囁いたその唇を他の子と重ねて。 わたしを抱き締めたその腕を他の子にまわして。 わたしと繋いだその指を他の子に絡めて。 胸がしめつけられて、苦しくて。 頬を流れ落ちていく涙。 ポロン、と、スマホがメッセージをつげる。 【ほんとうに、ごめん。今までありがとう】 その瞬間、また涙が頬を伝う。 わたしじゃないなら、もう優しくしないでよ。 突き放してよ。 中途半端に、期待させないでよ…! わたしにとっての、 大切な人は、 愛してる人は、 今だって君なのに。 君の、 隣に描いてた人は、 隣で純白のドレスを着てほしい人は、 薬指に光るものをお揃いにしたい人は、 愛を伝えたい人は、 同じ家に帰ってきたい人は、 大好きな人は、 愛してる人は、 大切な人は、 大切にしたい人は、 いちばんは、 わたしじゃなかったんだね。 END 最後まで読んでくれてありがとうございます 今回は失恋した女の子です 感想・アドバイス、おねがいします! 気に入ってもらえたら前の作品も読んでいただけると嬉しいです。