花々の送迎
去年も感じた覚えのある香りが私のもとへとやってくる。 この香りはヒヤシンスのものだっただろうか。静かに私に春の訪れをささやいてくれるようなこの香り、去年の今頃の私はどうとらえていただろうか。 二年生の最初の方、私は学校への不信感を抱いていた。 というのも、この中学校での一年生のころはなかなかのものだった。手に負えない生徒に、荒れまくる教室内の空気。いじめ、というと大げさだが、それ相応の物が私の身へと向かったこともあった。不登校まで経験した。そう、地獄だ。生き地獄だった。 そんな状況下で迎えた二年生。その時に花が告げてくれた匂いに、私は屈辱感を覚えた。何もないまま終わる一年間。その喪失感と失望感が私の心を押し潰して殺すかのようだった。 二年生の間もそんなものになるのだろうと高をくくっていた。だが、違った。 二年生は、一年生のころと比べて明らかに違うものがあった。クラス内の雰囲気だ。明らかに前のクラスとは違う、他人と話すことも容易だ。最初から実感することができるほどには違ったのだろう、このときはとても身が軽かった。 その環境下であった学校行事は、なかなかの出来栄えとなった。運動会準優勝、合唱コンクール銀賞、選抜リレー第二位、球技大会総合第二位。すべて二位だが、ある意味すがすがしい結果となった。このことをネタにして笑いを取るなんてこともあった。前なら私は何も干渉しなかったようなことだが、このクラスになって、自ら物事に干渉することも増えていた。 良いクラスで、良い体験をし、良い人と関わり、良い普段の日常を過ごすこと。 そこには、花々の支えがあった、と私は思っている。 春はヒヤシンスが出迎え、夏にはひまわりが明るく夏を照らす。秋になれば金木犀が星のごとく咲いては散り、冬には梅が小さく芽吹き出す。 そんなように、どの季節であっても花々は私を出迎え、そして送ってくれた。 どんなときであろうと、花々は私の味方でいてくれた。 そして、どうやら今年もヒヤシンスは出迎えてくれたようだ。 桜の木々は芽吹き、梅の花はまた来年への準備を始める季節。 そんななかでも、私の頭の中に残しておいたままだったヒヤシンスの香り、それを媒体とし、あの頃のことをたった今フラッシュバックさせている。 私が今の状態に戻るまで、一年もかかってしまった、という風に言ってしまうと悪くも聞こえるが、良く言えば一年でここまで戻り、そのうえで得られたものもあった。 今となっては自然と、ヒヤシンスはこの一生を応援してくれているように思えている。 花々のくれる後押しを受けて、私は三年生となり、高校へと向かう。 今年よりもさらに良く、そして楽しいことを祈る。そして、私を送ってくれる花々に感謝しながら、今後も人生を続けていこうと思う。 最後にはなりますが、花の皆様。今後とも、どうぞよろしくお願いします。