日影をくれてありがとう
この世界には二つの動物を混ぜた生き物…キメラが普通にいる世界になった。 オオカミと人間のキメラの僕、〈月夜見 日影(つくよみ ひかげ)〉は周りから見たら恐怖の対象だろう。 もちろん、オオカミ男とはちがう。オオカミ男は満月の晩にオオカミになるが僕はいつでもオオカミの耳の生えた人間だ。 そして僕は夜にしか活動しない。元々オオカミが夜行性なのもあるけどもう一つある。 『オオカミだ!』 『食べられるぞー!!』 僕は怖がられている。周りから避けられ、怖がられ、どこへいっても悲鳴、悲鳴、悲鳴。 だから誰もいない夜が好きなんだ。 ある夜、僕は散歩をしていたんだ。通りすぎる人はいない。まあ、夜だからな。一人ぶらぶら歩いていたら、ふと通りかかった公園に人がいた。普通の人だ。“普通の”…ね。 すると、その人も僕に気づいたみたいで僕に近寄ってきた。僕は急いでフードを被った。 「こんにちわ!…いやこんばんわ!」 「ああ、こんばんわ。」 「こんな時間になにしてるんですか?」 「そちらこそ。」 「ああ!星を見てるんです!私田舎の方から来て…都会は星があんまり見えないんです。だから…」 その人はさっきまでいた方を見た。そこには天体望遠鏡と星の本があった。 「星を見てるんです。ところであなたはなんで…」 「いえ…夜が好きなので…」 「なるほど。ところでお名前は…?」 「えっと…月夜見 日影です。」 「へぇーいい名前ですね!」 「そんなことはないですよ。これだから夜が好きになってしまうんでしょうか?」 そうだこんな名前…とその時、強い風が吹いた。フードがめくれて耳が見えた。 「あっ…あなた…オオカミ…すごーい!」 「えっ?」 どうやらこの人にとってはすごいことらしい。僕はこの人に全てを話した。 「なるほど…」 「僕なんて名前の通り、ひかげにいればいいんですよ。」 「そうかな?私はいいと思うしー!それにひかげには二つ意味があって〈日陰〉はその名の通り日陰なんだけど〈日影〉はね…」 「日の光って意味なんだよ!」 「えっ?日の光?」 僕はびっくりしてしまった。それと共にもう一つ感情が出てきた。 「僕…いていいの?」 みんなと一緒になっていいの?日の光に当たっていいの? 「いいんじゃない?」 目からは涙が止まらなかった。ああ、これが涙か… 僕はそれ以降夜に起きることはなかった。そしてあの人にも会うこともなかった。 でもいつも太陽を見ると思う。 「日影をくれてありがとう」 と。