知らないなんて 言わせない
___貴女のことを、好きになった。 体育が苦手な私に陰口を言わないで、優しく走り方を教えてくれた。 バスケのシュートの仕方を教えてくれた。 私は何をしても駄目だった。 昔から、自分の顔が嫌いだった。 低い鼻にパサパサな髪の毛。目も一重で小さいし、醜い。 昔から、自分の性格が嫌いだった。 努力ができなくて、後回しにしてしまうこの性格。 中学3年生の秋。私に遅い春がやってきた。 体育は嫌いで、みんなからしょっちゅう笑われる。 何度かズル休みもした。 体育ができないから、いつも二人組みをつくるときは余ってしまう。 「今日って奇数だよね? あたしらと一緒に組もう!」 艶のある髪の毛をお団子にしたあの子。 誰とでもすぐに打ち解ける、私とは正反対の子。 「バスケはね、ここから入れるのがコツなの」 ボールをゴールへ入れる姿はなんとも画になるなと思った。 _ナイスシュート!! 少し寒くなってきた体育館に高い声が響く。 私がゴールを入れたのは、ここが初めてだった。 「ありがとう、そらちゃん。シュート、入ったよ!」 「あたしちゃんと見てたよ!!ホント凄かったぁ」 こんなにも笑顔になれるのはなんで? 私は誰の前でも笑顔をつくって、ニコニコしてるだけだった。 けど、今はそんな意識なんてなくて、ただ自然に笑みが溢れてくる。 そらちゃんを、好きになってしまった。 知ってる。私が女の子だってこと。遥ちゃんも女の子だってこと。 また同じクラスになって、ホントに嬉しかった。 時々おしゃべりもするし、遥ちゃんのおかげで新しいクラスでも友達ができた。 感謝してもしきれない。 ___だからこそ、私は貴女へこの想いは伝えない。 貴女が好きだから。 「ありがとう、そら!」 「うん。またね、遥」 「私、そらと友達にれてよかったよ」 「あたしも、遥と友達になれてよかったよ」 『バイバイ』 今日は卒業の日。想いを伝えられなかった私とは反対に暖かい風が吹く。 遥が幸せに生きられるように。 遥か遠くへ続く綺麗なそらは、どこまでも続いている。 届かない。 __今度会ったら、この気持ちを伝えたい。 知らないなんて、言わせないから。