小説
「ねえ・・・この話途中で終わってるけど・・・」 病室の窓から差し込む光は 暖かく私たち二人を優しく包み込んでいた 「あ~ごめん・・・それまだ途中なんだ。全部書き終えるには時間がかかりそうかも・・・」 彼女は窓の外を見ながら言った 彼女の作る小説が私は大好きだ 彼女自身の思いや生活などをもとにしたこの小説は私を素敵な世界へ連れて行ってくれる 「ねえ・・・それ続き紗良が書いたら?絶対いいのができるよ」 えっ・・・? 「そんなの無理だよ・・・私には百合みたいな才能なんてないし・・・」 「明日も来る・・・?」 もちろん。小説の続きが気になるしね・・・と私は言った。 「そっか。」 彼女は嬉しそうにこたえた 病院を出るともう6時過ぎなのにまだ明るかった 生ぬるい風が肌にあたる もう6月が終わる・・・そんなのは分かっているはずなのに なんだか受け入れられなかった 終わりが来るとは分かっている 「はあはあはあっ・・・」 でもそんなの考えたら怖くて怖くて仕方がなかった 「はぁはぁ・・・」 だから何も考えなかった でもそれは間違いだったのかもしれない 「はぁはぁ・・・百合・・・!!」 病室のドアを開けた先には彼女の姿はなかった 代わりに一枚の紙がおかれていた 「遺書」だった ______________________ 紗良へ これを読んでいるということは私は死んでるね 楽しかったよ 私が書いた小説を幸せそうに読んでくれたのは紗良だけ うれしかった お話まだ途中のもあるけど それは紗良が作っていってほしい _________________________ 途中までしか読めなかった だめだ・・・もたない 目から涙があふれだす 後から百合のご両親から聞いた 百合はいつ死ぬか分からなかったので 毎日いろんな人宛てに遺書を書いていたそう 私宛の遺書はもう死を感じ取ったのか 涙の痕がたくさん残っていた 百合と彼女の小説の続きが見れない世界なんて・・・ 大嫌いだ 余命があるのは分かっていた でも分かりたくなかった でも彼女のあの言葉を一度信じてみようと 決心した 彼女のご両親に許可をいただき、お話などを聞いて勉強した 彼女の生活や性格・・・考え方、しぐさなどを そして見つけた 小説の続きを自分で書くことができた 少しは彼女に近づけたかもしれない いつか見せられたらいいな