迷い猫喫茶店
これは不思議な喫茶店に呼ばれた女性のお話 私は佐倉 加奈子(さくら かなこ) 会社員になって3年目 楽じゃない事はわかってたけど…こんなに辛いなんて… 帰ってから何するかも思いつかないなぁ… フラフラの足で歩いているといい匂いがしてきた 横を見ると『迷い猫喫茶店』と書かれた看板 なぜか私は、この喫茶店に求めている物があると感じていた ―カランカラン ドアのベルが鳴る 「いらっしゃいませ、お嬢さん」 店員らしい男性がコップを拭いている カウンターに座ってから気づいた 「あの、メニューって」 「無いですよ」 「えっ、無い?」 「そう、ここはお客様の必要とされている物を私が1から考えて即興でお料理を作るんです」 「必要とされている物?」 「ええ、そうですねぇ、あなたの場合は…『休息』が必要ですね?当たってるでしょう」 ドキッとした、確かに私はもう随分休んでない この人は信用出来る そう思って、料理をお任せした 「どうぞ、こちらは『眠り羊のスフレパンケーキ』です」 その料理はとても綺麗だった 紺色のガラスの上には羊を模したフワフワのスフレパンケーキが乗っていて シロップをかけるとそれが布団の様になる 「どうぞ、召し上がれ」 ドキドキしながら食べた 今まで食べたパンケーキの中で群を抜いて美味しかった 言葉では言い表せない様な食感と味で 自分が求めていた味がそこにはあった 「ごちそうさまでした」 店員さんにお金を払おうとしたが 「いや、良い食べっぷりだったのでお代は結構ですよ」 と、断られてしまった ―カランカラン 来たときと同じようにドアを開けて帰る すぐに変化に気づいた 体が重くない、眠気も全然無い、視界がクリアになっている 「ここはお客様の必要とされている物を…」 店員さんの言葉を思い出した あのスフレパンケーキ…あれが私の元気にしてくれたんだ… 私は帰ってからお店の口コミを書きたくて 喫茶店の名前を入れた 『迷い猫喫茶店に該当するお店は見つかりませんでした』 ネットのどこにも迷い猫喫茶店なんて無かった 夢かと思ったけど、今の私の体が夢じゃない事を裏付けてる …もしかしたら、本当に困ってる人の前にだけ現れる人間好きな神様だったのかも…なんてね