君が求めてくれるのなら
「おつかれ」 「おお、来ていたのか。珍しいな」 晴天の朝、屋上の扉を開けると、そこには相棒の彼がいた。振り返った君におはようと笑いかければ、同じ挨拶が返される。日々の鍛錬を怠らない彼は決まって毎朝ここにいるらしい。一体何時から起きているのか、俺はまだ知らない。 「練習か?」 「そうだ。……せっかくだし見ていろ」 俺が手近にあったベンチに腰かけたのを見届けた彼が、ぶわりと華麗に魔法を操ってみせる。客観的に彼のそれを見ることが、随分久々だと思い出した。いつも隣でしか見ていないし、そもそも戦闘中は自分のことで精一杯だから。 杖を振るのだって、出会った頃の大袈裟な動きが嘘みたいに、無駄な仕草ひとつなく。思わず魅力されるほどキラキラと強く輝いた魔法。きっと君の優しさと、天性の明るさからできている。 「俺がいなくても、君は大丈夫なんだろうな」 ふと本音がこぼれた。だって、もう。その魔法は既に完成しきっている。自分よりずっとずっと洗練されている。一人でも十分やっていけるだけの力を持っている。 何より、いずれ俺が君を直視できなくなってしまう。眩しすぎて、いずれ俺が燃え尽きてしまう。 「何を言っている?」 「え?」 「君が隣で戦ってくれれば、僕はもっと強くなって、輝けるじゃないか」 杖を下ろして歩いてきた君に、ほら、と当たり前のように手を差し伸べられた。逆光で眩しく光る彼は、神々しいほどに笑っている。ああ、敵わないな。その手を掴んですくと立ち上がった。 「そろそろ時間だ。今日もよろしく、相棒」 「……あぁ、分かってる」 君が求めてくれるのならば、俺は応えることしかできない。