無垢なヒーローと捻くれた研究者
いつだったか、無垢な少女と、話した時を思い出した。 「わぁ、きれい。雨粒がきらきらって、とっても素敵。」 窓の外は、雨が降っていて、それを2人で眺めてた、気がする。 「雨、濡れるから嫌いなんだけど。」 あの頃の私、ちょっと辛辣で現実しかみないような子供だったかも。 「でも、さ。道端の紫陽花も、虹色の傘も、水溜まりだって楽しいよっ。後で、飛び込も、ね。」 「楽しみになってきた?」って聞いてくれた彼女は、年相応の夢を抱いていた。 「いいよね、そんな、楽観的で。人生がさぞ楽しいだろうね。」 「……そう、ま、そうだろうね。いや、そうだよっ、楽しいよ!!」 妙に歯切れが悪かったな、あの子には珍しい。なんて、意外に思ってた気がする。 「ねぇ、君は、人生が楽しく無いの?」 「楽しいも何も……何一つ不自由なく暮らせればそれで十分。」 「ええっ、そんな、つまんなくって良いの!?」 大袈裟に驚かれて、そして、そっか、っていって、君は、綺麗に笑った。雨の筈なのに、光が差し込んでるように見えて、天使さんみたいで、恍惚とした、きらきらの笑みを浮かべてる。 「ねぇ、それじゃ、さ。「夢」を作ったら?ね、夢はね、向かって突き進んでる時、人を最も楽しくさせる、魔法なんだよ。」 「そんな、持つだけ無駄だよ。……いや、貴方は、どんな夢を持ってるの?」 あの時は、こんな楽観的な人なんだから、現実味の無い夢しか言わないだろうって、思ってた。そして、その考えは当たった。 「私?私はね、聞いてくれる?私ね、」 世界を救いたいの。 スケールの大きすぎる夢に、ぎょっとした。でも、あの子ならやりかねない。とも思ってしまった。 「世界を救うって、具体的には?」 「ええっと、具体的、かぁ。うんっとね、あのねっ、隕石が地球に落ちてきたら、私が隕石を砕いて見せる!!とかね。」 「無理、無理。どんだけ力がいると思ってるの。馬鹿じゃない。」 「いいや、ぜったい、ぜったい、やってやるんだから。ね、みてて。」 貴方の、傲慢なまでの自信が、羨ましかった。 「いいよ、多分、無理だから。」 そして、私はこの時から捻くれ者だった。 「そんなことも、あったなぁ。」 それから、何十年後。懐かしいな、あっという間だったな。 進路を決める時、何となくあの子の言葉が頭に響いて、今、私は研究者をしている。給与はあんまりだけど、未知のものを探求するのは、楽しくって、面白い。 私の人生に色をつけてくれたのは、貴方のおかげ。 今日、思い出したのは、あの時と同じよに、雨が降っていたからかも。と、空を見上げると、昼なのに、赤い星。飛行機かな、と思って見てれば、パァンって弾ける。 何かがおかしいな、思ってれば、つけっぱなしのラジオが訳を教えてくれた。 「本日昼頃、地球に隕石が落下して来ましたが、大気圏で爆裂。事なきを得ました。 次のニュースです。女性と思われる焼死体が、空から降ってきたと……。」 あの子のことだ。直感でわかった。あの子が、身を挺して地球を守ったんだ。 ああ。途端に、足がぐらぐらして、ぺたんと座り込む。血の気が引いて、手先は震える。 私が、殺したんだ。私が、あの子の将来に、死というゴールを作って、私が、無垢な彼女を躍起にさせたんだ。全て、全て、私のせい。私の、人殺し。馬鹿、馬鹿。 頭から呪詛が流れ出て、心を容赦なく切っていく。 「君もさ、ほら、夢見るのは無理でも、現実から目を背ける方法とか、わかった方がいいかもね。」 「いや、そしたら、前に進めないじゃん。」 「それでいーの。あっ、雨、やんだよ!!良かったぁ、濡れなくて済んだね!」 「雨の日も楽しいんじゃなかったの。」 「どっちも楽しいに決まってんじゃん。」 「やっぱり、貴方って馬鹿。」 でも、それより、私の方がどうしようも無い程馬鹿。 駄文でごめんなさいm(_ _)m 感想を送って下さると有難いです。