短編小説みんなの答え:0

Cat and rabbit pin

いつもは短く感じる通学路。今は恐ろしいほど長く感じる。ぽっかりと空いた空洞が気になりすぎてそわそわする。もう、諦めないと。私って、本当に諦めが悪い。 「ねぇ、芽衣、私ってほんとに変わんないね」 でも隣から聞こえるのは車道を走る車の音だけ。 内心舌打ちをする。諦めようと考えた矢先に。 「ごめんね、芽衣。変わってあげられなくて。」 そろそろ起きようと思ったらアラームが鳴る。なんだか時間に負けた気分。負けず嫌いな私はため息を吐く。外は雨。憂鬱だなぁ。 うーんと伸びをして姿見に自分の姿を映す。 オールバックになった前髪を触る。これは直すのに三時間くらいはかかる。どうしよう。もうあと一時間半しかない。こんな時は最終奥義、髪をピンで止めてしまうことしか選択肢はない。ピン、ピン…どこだ?あ、そうだ。私の宝箱にピンが入ってたはず。すがるように私は宝箱を開ける。中には小さい頃に芽衣と拾ったおはじきやラムネのビー玉、2人で描いた似顔絵、当時の宝物だった芽衣とのシール交換ノート、そして芽衣から誕生日プレゼントとしてもらったウサギのパーツがついた可愛らしいピン…。やめた。頬に何かが伝ってくる。思わず目を拭う。 あの時のことが蘇ってきた。このピンが子供っぽいということもあるが、芽衣が隣にいると錯覚してしまう。それが一番嫌だ。もう、芽衣はいないんだから。そう思っているけれど無意識にピンをカバンの見えるところにしまったのを、私は知らなかった。なんとなく、シールノートの裏表紙の裏を見る。その文字を見て、思わず吹き出してしまった。もう。やっと泣き止んだのに。 「めいめい!」 そんな声が聞こえた気がして、後ろを振り返る。でもそこにいて欲しい人はいなくて、自転車を漕いでいる大学生しかいない。 私が転校してから、もう2年か。時が経つのは早いというけれど、本当なんだなと薄々気づいてきた。無意識に私は髪につけた猫のついたピンを触る。ほんとはつけたくなかった。隣に未玖がいる気がして。でもつけなきゃなぁと思い、今は前髪を留めるピンとして重宝している。もう一度、後ろを振り返る。でも、さっきの光景と同じだ。違うところとすれば、あの大学生のお兄さんがいないことくらい。 「そういえば未玖って、負けず嫌いだったよなぁ。」 懐かしくて、可笑しくて、淋しくて、思わずポケットを探る。中から出てきたのはおはじきとビー玉。カバンの中を漁れば未玖と交換していたシールノート。ぱらぱらと中を捲っていく。中には、ぷっくりとした肉球のシールやホログラムの薄いシールなど多種多様なシールが出てきて、泣けてくる。あ、もう白紙。はは、懐かしいなぁ。そう思って裏表紙の裏をなんとなく見ると、未玖の字で、こう書かれていた。 猫とウサギはずっと仲良し。 最初は意味がわからなかったが、今、横を通り過ぎた高校生を見て意味がわかった。 「「猫とウサギはずっと仲良し。」」

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