一度完結した物語
「好きです。つき……」 「待って、俺に言わせて。佳奈。好きです。俺と付き合ってください。」 一度完結したと思った物語は、まだ続く。(前作の続きっていう意味じゃないよ。) 「ねぇ。山崎うざくない?」 「なんで自分のせいで伊月くんが試合に出れないってことに気づかないんだろうな。」 山崎佳奈(やまさきかな)中2。もうすぐ、彼氏の宮代伊月(みやしろいずき)と付き合って2週目を迎える。 ……けど、こんなの聞いちゃったらどうすればいいかわかんないよ。 伊月は、最近試合……バスケをやってるんだけど……にスタメンとして出れていないらしい。 放課後、ものすごく頑張って練習しているのを私は見てるのに。 私のせいで伊月の努力が報われないなって思ってもなかった。 「ねえ、山﨑さん。そこにいるんでしょ。」 バレてたっ! 「聞いてたんなら話が早い。ねぇ。伊月くんと別れてよ。別れないと、伊月くんに何があるかわからないよぉ?」 声の主、有栖さんは大企業の一人娘だ。彼女がお父さんに一言言えば伊月がもっと辛い目に遭うかもしれない。 それだけは絶対にいやっ! 「……わかった。来週別れるよ。」 考えた末の一言だった。 短めのデニムスカートに、オーバーサイズの白いTシャツ。肩にはブラウンのショルダーバック。 我ながらシンプルだ。 「伊月、ごめん!待った?」 「ううん。そんなに。」 最後のデートは楽しかった。 ゴーカートに乗って。ジェットコースターで笑って。伊月ハンバーガーを一口もらった。 そして、 「ねぇ。最後にあれ乗らない?」 観覧車に乗った。 「うわぁ。高いね。」 「高いな。」 ここの観覧車はかなり大きくて、街全体が見渡せる。 でも、これから伊月をふるんだとおもうと、気が重い。 はぁ、と深呼吸をして伊月に向き合った。 「ねぇ。いにゅき。」 噛んだ……。恥ずかしい。 多分真っ赤になってるであろう私を伊月が優しい手つきで撫でる。 ……やめてよ。優しくしないでよ。 「けふんけふん。伊月、別れよ。」 「なんで?」 「もう伊月を好きだと思えない。お願い、別れてください!」 重たい沈黙がゴンドラに充満した。 「髪。」 「え?」 「髪触ってる。佳奈が嘘つくときのクセ。ねぇ。ほんとは何?」 「えっと……。」 バレてしまった。どうしよう。他に考えてない。 伊月が私の頭に手を伸ばす。 「佳奈が好きでもない男に自分を触らせるわけないって俺知ってるから。佳奈が俺のこと大好きなのも知ってるから。もちろん、俺も佳奈が大好きだし、信用してるから。ねぇ?ほんとのこと言って。」 優しい伊月の言葉に涙がポロポロと頬を伝った。 「有栖さんに、伊月が試合出れないのは自分のせいだって……別れないと伊月がもっと酷い目に遭うって言われて……。」 「俺、佳奈と別れる方が辛い。ごめん。気づいてあげれなくて。」 伊月がそっと私を抱きしめる。 伊月の温度と、優しい香りに今度こそ涙腺が決壊した。 泣きじゃくる私の背中を伊月がそっと撫でる。 余談だけど、この様子を観覧車のスタッフさんにしっかりと見られていた。 「ねぇ。伊月くんと別れたの?」 「ううん。別れてない。」 「は?私、言ったよね。全部何もかもあんたのせいだって。パパに報告するから。」 そう言って有栖さんがスマホを取り出したその時だった。 「なぁ。俺の彼女に何すんの?」 「ひゃ!伊月くん!えっと、これは、」 「ん?どっか行って来んない?」 有栖さんが早足で逃げ帰る。 「伊月ありがとう。」 「このくらいどうってことない。」 これは、一度完結した物語の裏話。 綺麗な恋の話。