約束
『ねぇ…なまえ、なんていうの?』 まだ6歳だった君は我慢出来なかったのだろう。 散々看護師さん達に入るなと言われていたのに、好奇心のほうが勝ってしまったと言わんばかりに、私のいる病室にためらいなく入ってきた。 「るか、あなたは?」 つい寂しかったので話してしまった。 咎められなかったのがよほど嬉しかったのだろう。君は顔をほころばせて、 『すず!よろしくね!』 と言った。 『ここに来たのはナイショにしてほしいの。じゃないと怒られちゃう…』 しゅんとする姿が可愛くて、思わず「いいよ、約束ね」と言ってしまう。 髪は綺麗な薄茶色で、緩く2つ結びをしている、笑うと桜の妖精のような、可憐な君。 そんな君とは長い付き合いになった。 看護師さんの目を盗んでお互いの病室を行き来したり、駄目だと言われたのに外へ出てかくれんぼをしたり、そこら辺にいた鳥を追いかけたら隣町まて来ていたり… まぁ、色々とやらかした記憶は無くはない。 でも、人生で一番楽しかった。 「楽しかったのにな…」 既に雪は溶け、桜のつぼみがほころびはじめている。 あれから5年、私は病気も治り、今日、中学生デビューの日だ。 ずっと前にすずから貰ったお守りをカバンに付け、初めての通学路を…君の居ない通学路を歩く。 爽やかな朝だと思い、ふと橋の方を見ると、1人の少女の後ろ姿があった。 綺麗な薄茶色の髪。2つ結びをしていて、少し幼く見える。 なんで…? 一瞬目を疑った。 夢かと思った。 だって、すずは病気が悪化してしまって… だが、頬をつねってみても痛みが伝わる。 間違いない。いや、間違える筈がない。 「すず…?」 私は恐る恐る尋ねる。 少女は振り返り、私を見てにこりと笑う。 ー 『るか』 ー 次に瞬きをすると、一瞬にして目の前にいた少女は消えた。 「ここに来たのはナイショ…ね。見つかったら駄目だったっけ」 思い出し笑いをしながら、私は再び通学路へと戻る。 会いに来てくれてありがとう。 ねぇ、次は私のお願い聞いてくれる? また5年後、この橋で会おう 「約束…ね」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めてで上手くないかもですが、だれかの心に届いてくれると嬉しいです。