桜の花と嫌いな人
大きな桜の樹を目印に、疲れて棒のようになった足に鞭打って歩く。今日は姉貴の命日だ。 俺は千里書処。小説家で、苛められっ子。そして、自分の代わりに姉貴を殺した、人間の屑だ。 俺がまだ高校に通っていたころ、俺のクラスでいじめが起きていた。いわゆるスクールカーストというやつの一軍を貼ってるやつの彼女が、ある女子をいじめていた。流石に目に余るものがあったので何度も注意したものの全く聞き入れず、最終的に「実力行使」まあ、端的に言うと、そいつの頬を叩いて、やめさせた。そして、その日から「彼女は」いじめられなくなった。代わりに、俺が標的になった。主に俺をいじめたのは、例のあいつの彼氏だった。あいつは自分からは手出しをしなかった。結局、俺は学校にいかなくなり、創作活動に専念することになった。悲劇が起きたのは、それから2,3ヶ月たった頃だ。どうやって知ったのかは知らないが、姉貴が校長に対して抗議しに行ったらしい。その帰りに、姉貴は死んだ。事故死だった。居眠り運転のトラックが、姉貴を無惨な死体に変えた。多分俺が他人とかかわらなくなったのは、その日からだろう。親は手を差し伸べてくれなかった。父親が他界して、母親は逃げた。俺は善人が嫌いだ。傷ついたら悲しむ人がいるくせに、平気で誰かのために傷つく。姉貴は、俺のために傷ついた。だから俺は、善人が嫌いだ。 「綺麗・・・」 意味のある言葉を発したのはいつぶりだろうか。そのくらい、きれいな桜だった。「自分が死んだら、墓の代わりに桜を植えてほしい」姉貴の要望だったよな。確か、桜は死体の養分を吸うんだって言ってたっけ。不意に吹いた強い風に吹かれて舞い散った桜の花びらを一枚、つまんだ。 「ったく…また誰かのために傷つきやがって」 やっぱり俺は、善人が嫌いだ。そう改めて思った。 口角が少し上がっていたのには、気づかなかったフリをした。