短編小説 負け
ある日”ソレ”はやってきた。形のないモヤのような存在で。ある日人々は感じ取った。言葉ではない何かで、 これが伝えられている種族の中で1人実験隊となってもらう。 と。その時日本人は初めて理解した。ソレがUFOだと。 国からお告げがあった。このことは海外では全く話にならず、日本だけで起こっていると。そして生贄となる人をどう決めるのかを…… じゃんけんだ。最後まで残った1人が生贄だ。 放送でそう聞こえた。人々がパニックになったり逆に余裕そうにしている中、30代の1人の男、Aがニヤリと笑っていた。 「こいつは金になりそうだ。」 数日後、準備が整った。ここまで待ってくれているUFOにありがたみを感じながらAは対戦相手を見る。見たところ20代前半のサラリーマンだ。もうすでに青い顔をしている。 バカだな。極端な話、1億2000万分の一だ。当たるわけないだろう。 そうほくそ笑みながらじゃんけんをしようとしている相手に言う。 「2万でどうだ。」 「は、はぁ?」 一瞬驚いたような顔をしたが、彼は急いで財布から2万出して渡した。 「んじゃ、パー出すから。」 途端に彼は疑い深い顔をしたが 「嘘なんかつくかよ。こんないいビジネスだ。一回でやめるかよ。」 というと納得したようなしてないような顔をしてしっかりチョキを出してくれた。もちろんAはパーだ。そうしてAは次々と金を巻き上げて行った。だが彼は軽率だった。こんなに多くの人がいるんだからじゃんけんは100回くらいになるだろうと。だが実際は30回前後だ。どれだけずれようと±5以上の差は出ない。そして気づいたら彼は残りの数十人に入っていた。 「あれ?もしかして、俺、、、ヤバい?」 ようやく気づいたAだが彼は… 「い、いや。あと一回は負けれる。 …2回はいけるな。」 もうすでにタダで金をもらえることに快感を覚えており中毒となっていた。そして… 残り16人、 「そ、そろそろやらないといよいよまずいな」 彼は負けた。 「!?っっ!くっ、くそ!!……いや、まだ全然希望はある…」 残り8人、彼は負けた。 「いっっ、いや、まだっ!まだ2回ある。2回、2回、2回、2回2回2回2回2回…」 彼は狂いつつあった。 残り4人、彼は負けた。 彼はもう何も言えなかった。相手も驚きと喜びで腰を抜かしている。そしてあまりの恐怖に彼は気絶した。 数時間後、冷たい風がなびく深夜にあまりの寒さで起きた彼は、壊れかけていた。 「はは、ははははは、冗談じゃない。1億2000万分の1が俺…?こんなにも金をかき集めたこの…お、れ?」 最終試合、彼は負けた。 「、、、は?、、、、、、いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだイャアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!………………………………」 すでに壊れかけていた彼は発狂したのち廃人となっていた。多くの人々がその映像を撮り、ネットにアップした。見る人みんなが笑い、まるで人ごとのように彼のことをダサという。 そんな彼のその後を見たものは誰もいない。 ある日”ソレ”はやってきた。絶望を連れて。 ある日人々は感じた。怒りを。 ある日たった1人の男がたったの1億2000万分の1を引き当て、廃人となった。 その日”カレラ”は憤慨した。送られてきた物を自身の故郷で開封したら”器”しか無かったことに。 その日━━━━━ 地球は滅した。