短編小説みんなの答え:5

人魚姫

 ああ、死ぬんだろうな。そう思った瞬間、   ゴボッ  自分の口から出る大きな泡。光に照らされた水面へ昇っていく泡。諦めた私は美しい光景の真反対へ沈んでいくーー。    ふっと目を覚ますと何とも言えないオーロラのような色が目に映った。 「あ、起きた?」  声のほうを見ようと首を動かす。そこには、この世のものとは思えないほど綺麗な髪色をした美しい妙齢の女性。それよりも気になるこの部屋のモヤッとした空気。 「ここは?あなたは?……私は?」 「ここは〇△※海でいちばん小さな家。でも、いちばん綺麗な壁の色の家なんだよ。私はセレ。君のことは知らない。海の上の方から降りてきたんだろ?」  そうか、水の中だからこんな感触なんだ。あれ、何で私は喋れてるの?  ズキ、ズキン。  急に頭が痛い。蘇る、記憶。 「私は、白里海蘭。白里財団の令嬢。クルーズで世界旅行中に溺れた……?」 「おお、占い婆の言う通り!」  妙齢の美女が手を叩いて喜んでいる姿はなかなかにシュールだ。この間、私はずっとベッドの上に横になっている。起き上がろうと足をーー動かせなかった。  驚いて布団をめくる。すると、淡い色のうろこが覗いた。 「っ、何これ、人魚?」 「……ごめん。」  セレさんからの急な謝罪に驚く。そして、躊躇いがちに教えてくれた。  落ちてくる私をつかまえた時、私はもう溺れて虫の息だったこと。生き返らせるために歌を使って、私を人魚にしたこと。ーーもう、地上には帰れないこと。  もう、地上には、自分の家には帰れない私はセレさんの家で時を過ごした。  ある日、私は一人でお留守番することになった。  セレさんが家を出て5分。こっそりと家を出て、向かった先は占い婆の家だった。私は知っているのだ。占い婆はかつて人魚姫を人間にする薬を作った魔法使いということを。 「おまえさんが元人間の新米人魚じゃろう。もちろん知っておる。セレがいつも話していたし、何よりわしは占い婆。おまえさんの心が読めるんじゃ。おまえさんが欲しいものもわかる。あの人魚姫に渡した『人間に戻れる薬』だろう?」  私はふっと笑う。 「心が読めるなんて嘘だね。私が欲しいのは恋を叶える薬。」  一目惚れ。セレさんが好きだ。  欲しいものは手に入れる。これが大嫌いな白里家の血を受け継いだ証拠。驚く占い婆の前でニヤリと笑った。

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