ありがとう。
「ありがとう。」 何度その思いを口にしようとしたか。それなのに私の口は開かない。 目の前の病室ベッドに横になり、苦しそうに息をしているお母さんを見ると、どうしても声が出なくなってしまうのだ。 一緒にいられる時間があと少ししかないと分かっているからこそ、口はますます重くなる。 ダッテ、ソンナコトイッタラオワカレガツラクナリソウダカラ。 ダッテ、ソンナコトイッタラオワカレヲミトメチャウコトニナルカラ。 ダッテ、ダッテ、ダッテ………。 私の頭の中で、だってだってがグルグル回っている。 その時、お母さんの周りでひっきりなしに動き回っていたお医者さんが、暗い顔で告げた。 「残念ですが、お母さんの命はあとわずかです…。」 「そ、そんな…!」 ありがとうと言わないと…!今言わないと、一生私は後悔する。そう強く思うのに、相変わらず口は開かない。涙が出てきた。 「お母さん…!お母さん!お母さん!!!」 私を育ててくれたお母さん。私を見守っていてくれたお母さん。私を産んでくれたお母さん…。その命が今、失われてしまう…! 「ありがとう。」 「…え?」 口を開いたのは私ではなかった。お母さんだ。震える声で、でもはっきりと、思いを伝えてくれている。 「…体が弱かった私には、あなたがただ一つの救いだった…。あなたが笑っていると私は安心した…。ありがとう。本当に。勇気をくれてありがとう。」 そんな…私がお礼を言わないといけないのに…。でも、私もお母さんにとっては支えになっていたんだ。…嬉しい。 「私こそ、ありがとう。」 ずっと言いたかった言葉が、すっと出てきた。 「お母さんは優しくて、一緒にいて楽しかった。お母さんの笑顔を見ると、幸せになれた。次会った時には、私の長い人生を聞かせてあげる。だから私のことは心配しないで。本当にありがとう。…お母さん大好き。」 お母さんはふふっと笑った。 「私も大好きよ。」 お母さんの手から力が抜けた。… 「ご愁傷様です…。」 お医者さん達が、声をかけてくれる。私は、顔にはいく筋もの涙の筋がついていたが、もはや泣いてはいなかった。だってお母さんに自分のこと、聞かせるって約束したから。きっとその時、涙ばかりの人生だったらお母さんは悲しむ。お母さんに胸を張って伝えられるような、お母さんが聞いて喜ぶような、素敵な人生を私は歩むんだ。 病院を出た私は、青々と広がる空を見上げて呟いた。 「お母さん、私、お母さんに自慢できるような人生を過ごす。だから私のこと、見守っていて。辛い時、悲しい時、お母さんのことを思い出して頑張るから。…お母さん、ありがとう。」 見上げた空には、真っ白な飛行機雲が、どこまでもどこまでも続いていた。______ ~FIN~ つむぎです。どうでしたか?「ありがとう」という言葉にはどんな気持ちが込められているのかを意識しながら書きました。感想お願いします。
みんなの答え
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うわーすごい感動しました。
ありがとう………この小説を読んで、ありがとうがどれだけ大切なのか知りました。 11歳が書いたとは思えないですわー!人の心を動かしたこの小説……書籍化しないかなー!?
つい泣いてしまいました。
「ありがとう」この言葉がこんなに、 大切かと言うことがよくわかりました。 しかも、バラードを聴きながら読んで いたので、もっと気持ちが伝わりました 「お母さん…!お母さん!お母さん!!!」 私を育ててくれたお母さん。私を見守っていてくれたお母さん。私を産んでくれたお母さん…。その命が今、失われてしまう…! 「ありがとう。」 「…え?」 口を開いたのは私ではなかった。お母さんだ。震える声で、でもはっきりと、思いを伝えてくれている。 「…体が弱かった私には、あなたがただ一つの救いだった…。あなたが笑っていると私は安心した…。ありがとう。本当に。勇気をくれてありがとう。」 そんな…私がお礼を言わないといけないのに…。でも、私もお母さんにとっては支えになっていたんだ。…嬉しい。 「私こそ、ありがとう。」 ずっと言いたかった言葉が、すっと出てきた。 ここのシーンか、グッときます。 こんなに短い文章で泣いたのは、 はじめてです。 打ち込みお疲れ様です。 そしてこれからもっと本を読もうと思い ます。
感動
感動しました。 私も、その時は「ありがとう」って、言えるかな・・・ 実家で、犬が2匹いるのですけど、その子のおかげで明るくなれて、友達も増えたのです。感謝しかありません。 お別れとなると、悲しいです。でも、必ず生き物には、お別れの時が来るのです……悲しい(´;ω;`)