短編小説みんなの答え:24

顔色を伺う

「塾も考えた方がいいかしら? 美優の自由だけど……」 テストの結果表を見て、母がため息をついている。 あぁ、塾に行ってほしいんだな。そう悟る。 「……じゃあ行こうかな」 「本当に良いの?」 行かせたがってたの、あなたじゃん。駅前の塾のパンフレット集めてたの、知ってるよ。 そう思うけど、そんなこと言ったら不快な気持ちにさせるから。 「うん」 と答えた。 美優という名前は、心が美しく、優しい子に育ってほしいという願いからつけられたそうだ。 美しいかは知らないけど、優しいねってよく言われる。……どんなときに言われるか、覚えてしまうくらいには。 授業中、誰も手を挙げなくて。授業が進まなくて先生困るなって思って。 はい、と手を挙げて自分の考えを述べる。わからない人がいたときのためになるべく詳しく説明して。 すごいね、なんて言われたときは、たまたまだよーとごまかす。 そうすれば相手も不快な気持ちにならないでしょ? そんなふうに気を遣いすぎる毎日。 相手が幸せな気持ちで、何事もなく過ごせるなら。自分が損をすることは厭わない。 相手が笑ってさえいれば、私も幸せだもん。 感謝されなくても良い。誰に気付かれなくたっていい。 ……そう思ってたんだけどなぁ。 『なんで何もやってないの!?』 『私のほうが大変なんだから』 『たまには気を遣って!』 お母さんが、そんなことを言ってくるようになった。 あれ、私はいつも気を遣ってるのにな。 私だって大変なことあるのにな。 あ、私のことを気遣えないくらい、お母さんは疲れてるんだ。 そっか。じゃあ色々やってあげなきゃ。 でも、これもあれもと、要求は増えていく。 最初はお風呂を沸かすだけで褒められたのに、いつのまにかそれが当たり前になって。 洗濯物の片付けも、食器の片付けも、掃除も、夕食の準備も。 だんだん褒められなくなって、感謝されなくなって。それが当たり前になって行く。 当たり前のことに、人は感謝しない。 ……感謝されなくて良いって思ってたはずなのに。 一度されてしまったのがいけないのかな。 あったものを失うと、人は虚しくなるのだと知った。 「美優って、なんで塾に来たの?」 塾の友達に聞かれた。 「お母さんが行って欲しそうだったから」 そう答えると、彼女は困惑した顔をした。 「行って欲しそうだったから?……行けって言われたんじゃなくて?」 「うん」 「え、なんで? 来たかったの?」 彼女の言葉を聞いて、少し悩む。来たかった、のかな。 いや、別に。 「そういうわけじゃないよ」 「え、じゃあなんでよ」 なんで、という言葉をいっぱい言われる。 どう答えるのが正解だろう。嘘はつけないしなぁ。 「行ったらお母さんが喜ぶから」 これがほんとのこと。嘘はついてない。 「え、美優の気持ちは…美優はどうしたかったの?」 彼女はそう問う。私の、気持ち? どうしたかったか? 塾に行きたかった?……そんなわけない。 新しい場所になんか行きたくなかった。なるべく人と関わりたくなかった。勉強なんてしたくなかった。 それでもするのはお母さんが喜ぶから。 ────私の気持ちは? 「……行きたくなかった」 そう呟くと涙が、じんわりと溢れてきた。 「行きたく、なかったよ」 あーあ、ここ塾なのに。 泣いたら迷惑かけちゃう。 みんなを困らせちゃう。 泣き虫な子って思われちゃう。 友達だって困ってるよ、絶対。 顔をあげたら、 (ほら……) ね?と続くはずだったのに、その1音は消えて行った。 彼女はとても優しい瞳をして、ふわっと私の頭を撫でた。 「偉かったね、よしよし」 彼女の声はすこしだけ演技かかっていたけど、それがまた、すごく甘やかされているように私に感じさせた。 「お母さんに、気を遣ってたんでしょ?」 なんでわかるんだろう。 うん、と頷くと 「本当は来たくなかったの言わなかったのも、私のこと気遣ってくれてたんだよね? ありがとう」 本当に、なんでわかるの? と思いながら、頬の涙を雑に拭う。 偉かったねって。 ありがとうって。 言ってもらいたかったことを、彼女は言ってくれた。 「そんなに気遣わなくても、私は離れていかないから。ね?」 「ほんと?」 「ほんと」 「じゃあさ」 ぎゅってしたいの。 いつもだったらこんなこと、絶対に言わない。でも 「いいよ?ほら」 そうやって手を広げてくれる彼女になら、本音を言っても良いかもしれない。そう思った。 END 読んでくださり感謝です!楽しんでいただけたら幸いです。 臣です。おみ、と読みます。長野ではちょっと積雪しました。皆さん、寒さと乾燥にはご注意を…! 感想やアドバイス、お待ちしてます。応援してくださる皆さん、大好きです! ※他人を傷つけることは、絶対にしないでください。

みんなの答え

辛口の答え

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すごい!

こんにちは! 久しぶりですねー! 感動しました…。 久しぶりに投稿されていて、嬉しかったです! めっちゃいいお話ですね。 私もぎゅってしたいですけど、言える勇気がないです!笑 気遣える人って素敵だなと思います。 臣さんって、考えさせてくるれる小説を書いてくださるので、本当にすごいと思います! また楽しみに待ってます! では!


友達好きだわ

どうも、ゆにと申します(*´∀`*) 臣ちゃんの次作まだかなぁ、なんて思っていた矢先に見つけました(笑) 授業の時、誰も手挙げなくて申し訳ない気持ちめっちゃ分かるわ…。 結局言うんですけど(笑) お母さんのはっきりとは言われてないけど、「行かせたがってる」ていう気持ちを悟る主人公に共感(またかよ)なんですけど。 完璧私の話なんですけど、たまに言葉を濁して話す友達とかがいるんですけど、そういう時に「あぁ。こうして欲しいんだ」ってすぐ悟っちゃうので…。 私も美優ちゃんと同タイプだなーと感じました! あと、「なら塾辞めればいいじゃん」とか言わず、受け入れてあげる友達好きです(*´` 素敵なお話ありがとうございました♪ ではー。


臣ちゃん!!

ども!しーみょん♪だお!!ヨロシクー!(^O^) いい作品だと思ったよ!! 何回も読んじゃった!(笑)(⌒▽⌒) こーゆーの、ほっこりするなぁー。 主人公は、お母さんのことをいろいろ考えてるんだね!! 素敵だぁー!! 私も臣ちゃんに負けず、小説書くぞー!オー!! また楽しみにしてるねっ!! バイッ!( ^_^)/~~~


臣ちゃんっ!

のおっ!こんちゃ☆秋菜だよー♪ こんにちはっ☆こんばんはっ☆ 秋菜です(*´▽`*) いつもとは路線ちがうねっ! すごい、ほっこりするような、いいお話♪ お母さんの期待に答えないと…ってうタイプだね。 美優ちゃんほんっとうに優しい子だね♪ これからも自分のペースで頑張って♪ 応援してるよっ! q(*・ω・*)pファイト! 素敵なお話書いてくれてありがとうございました♪ じゃ、ばいちゃ☆ お体に気を付けてね!


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