短編小説みんなの答え:14

狼男の僕

僕は生まれる時代を間違えた。 天下統一された、争いの無い時代に生まれたかった。 一度統一された時代は、終わりを迎えようとしていた。 争いが毎日起こっていた時代に生まれなかった事は嬉しいけど、こんな毎日も嫌だ。 てくてくと夜道を歩いていると、木々の間から刀を持った武士が現れた。人質だろうか、可愛らしい少女の首を絞めている。少女の頭にはびらびら簪が刺さっている。独身らしい。 可愛い少女だ。僕とそんなに年も変わらない。……好きだな。 えっ、これって一目惚れ? 武士のことは一瞬、壬生浪とかかと思ったけれど、どうやら違う。壬生浪が取り締まっているのは討幕志士たちだ。 周りの人たちは壬生浪を毛嫌いしているけれど、僕は内心、壬生浪のことを嫌いには思っていない。このまま志士たちを取り締まって、穏やかな世界にしてもらえるとありがたい。僕は苦しまなくて済む。 「持っているものを全て出せ」 武士は土だらけだった。何があったのだろうか。 「藩から逃げてきたの?」 とりあえず思いついたことを言ってみると、図星だったらしい。抜刀して僕に襲いかかってくる。 脱藩って重罪だったんだっけ?武士ではない僕には分からない。 僕は武士から刀を奪うと、その刀で武士を突き刺した。武士は痙攣しながら、どさっと音を立てて地面に倒れた。刺された部分から血が流れた。 強く刺しすぎた。迂闊だった。今日は満月の晩。満月の晩に血を見ると僕は……。人間じゃなくなってしまう。 身体中から毛が生えてくる。尻尾が生える感触がある。耳が現れるのを感じる。伸びていく爪を見た。歯が鋭く尖って、牙になっていくのを悟った。 びらびら簪の少女が怯えたように一歩後ずさった。そして、透き通るような綺麗な声で一言、 「狼憑き?」 これだから、平和な世界を希求しているんだよ。平和になれば血を見る機会も減る。狼に変身する頻度も減るんだ。 少女は事もあろうに僕に近づいた。 「ねえ、大丈夫?体に異常とか無い?」 大丈夫という意味を込めて僕は頷いた。 少女はほっとしたように顔を綻ばせると、 「私、さよ。あなたは?」 牙が返事をするのを邪魔する。だが、僕は何とか答えたくて頑張った。 「泰助(たいすけ)」 さよは頷くと、 「満月の晩に血を見るとこうなるの?これは一晩中続くの?生まれつき?」 さよは賢い。 僕は頷いた。両親がこれを外部に漏らさなかったおかげで僕は今、周りの人から疎外されることなくこうしていられている。 少女は困ったように頷いた。やがて、 「私、今日、病気になった祖母の所に行こうと思っていたの。一緒に行かない?一晩だけの事でもその方が安全でしょ。壬生浪の人達も心配だし。壬生浪、嫌いじゃないんだけどね。武士に殺されそうになった時に助けてくれたの」 さよは僕と同じ気持ちらしかった。 僕は親近感を抱いて、頷いた。 僕が書いた手紙をさよに両親に送ってもらい、さよと一緒に大和に行った。おばあさんに会っている間、僕は辺りの店を見ていた。 結婚相手でもない少年を親族に会わせるわけが無い。というか、僕が遠慮した。 てくてくと来た道をさよと一緒に戻る。 山道を歩いている最中、さよの足が止まった。 「あのさ、私と泰助くんが会うのはこれが最後なのかな」 僕はさよの方を見ずに答えた。 「多分ね」 人間じゃなくなる僕にはこんな素敵な子を好きになる資格が無い。一緒にいる資格も無い。 狼になっても知能は低下しないし、理性も失わない。運動能力が向上するし、夜目も利くようになるし、五感も鋭くなる。損は無いが、僕はやはりきっと人間じゃないと思わせられる。血を見ずに済むようにするためには世界が平和になるしかない。戦いばかりの時代に生まれなくて良かったけれど、また戦いが始まりそうだ。 「嫌だな」 さよがぽつりと言った。 僕の中にわずかな期待が生まれる。 そんな可能性、無いはずなのに。期待通りでもさよを困らせるだけなのに。 それでも、わずかな期待とともに僕はさよに聞いた。 「嫌だって、何で?」 一瞬の沈黙。 「好きだから……。泰助くんのこと」 期待通りだった。 小さな自己嫌悪が生まれた。……僕から言いたかった。 まだ、間に合うかな。もう間に合わないか。 「こんな僕でも良いの?狼になっちゃう僕でも?」 「狼なんてそんなの関係無いよ。狼だからって好きじゃなくなるのは愛とは呼ばないと思う」 正論だ。 もう間に合わないけど、言わなきゃいけない。 「僕も好きだよ、さよのこと」 こんな僕でも好きになってくれる子が現れた。その子と両思いだった。さよとなら狼になることも受け入れられるのかな。

みんなの答え

辛口の答え

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カッコイィ…

同い年とは思えないぐらい、人物の心情がしっかり読み取れて、 普通にビビらされましたw 主人公の空想とかもしっかり出来ていて、いい作品だと思います!


武士ィ!!!

武士でた、武士でた!ありがたいです。 お話しもとても素敵です。 かんどうというか、胸キュンといいますか、興奮してます。  死んだけど武士が出たぁ!


めっちゃ良いです!

本当に良かったです! 狼男の印象がガラッと変わりました。 ファンタジー的なの私、大好きです! 早く平和な世界が来ますように。 書いてくれてありがとうございました。


ストーリ(多分)

そこで生まれたのは本当にですか? 作り話ですか? 刀もった人本物にですか? でも、いいね、これ。 泣きそうでした 急に眠くなりました。


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