被り物
「なんか、香奈って変わったね」 そう、言われた。普通なら嫌な言葉だろうけど、私はうれしかった。 ――目標を達成できたから。 親が、私を叱る。 「なんでアンタはバカなの!?」「いなくなれ」「役立たず」「消えろ」 「こんなの、うちの子じゃない」「さよなら」「二度と来るな」 私は、自分が特別バカな人だと思っていなかったのに、 その時初めて、自分はバカな人間なのだと、 思った。 運動も、勉強も、人一倍頑張っていたし、友達だってたくさんいた。 家事だって、たくさん手伝った。 でも私はダメなのだと分かった。 だから、私は被り物を被ることにした。 偽物の自分を作り上げた。 ずっと笑って、涙もこらえて、怒られないように生活をする。 部活もやめて、学校が終わったとたんに走って帰る。 休日も、家事、家事、家事。 そうしたら、親がほめてくれるようになった。 「叱ってきた価値があったわね」「役に立つ娘だ」「これからもよろしく」 「部活やるよりこっちの方がずっと良いだろ?ええ?」「前のバカはどこに行ったのかしら?」 私は、大人になるまでこれで生きていこうと思った。 大人になった。 私は、女優になった。 才能があったようで、1年後には大きな映画のオーディションで、主演を勝ち取った。 その映画の主人公は、本当に、中学時代の私と全く同じの性格、生活。 私は一生懸命演じた。 あの頃の私とそっくりになるように。 今の私は、昔の私とは違う。 とても、自由で、好きなことだできる。 まさに、これが私の「幸せ」だ。