短編小説みんなの答え:3

金木犀のような君

「流れ星見たいなぁ」 「今度の夏休み見に行こっか」 すると彼女は目を輝かせて元気のいい返事をした。 結局それは口約束になってしまった。 俺たちは恋人同士ではない。 仲のいい友人といったところだろう。 夏の終わりと秋の始まりを告げる金木犀が咲いた9月中旬。 やさしく鼻をつく甘い香りがふわっと身を包む。 一華は金木犀を愛おしそうに見上げている。 「金木犀好きなの?」 「うん!ずっと好き」 「そうなんだ」 「でもね、柚斗くん。金木犀ってすぐ散っちゃうから悲しいんだ。この香りが好きなのになぁ」 「俺はこの匂い苦手だな」 つい、口に出してしまった。やばいと思って彼女に視線を戻した。 すると口を尖らせ、こちらを見ていた。 「ひどーい!一華の心は傷つきました」 「ごめんって。来週の誕プレいいやつあげるから許して?」 「しょうがないなぁ。期待してるよ?」 そういって彼女は笑顔になった。 俺はこの笑顔が好きだ。 * 一華の誕生日当日。 柚斗はプレゼントを持って彼女の家へ向かう。彼女は窓から首を長くして待っていた。 「柚斗くん!待ってたよー!」 俺が手を振るとぶんぶん手を振り返してくれた。 「誕生日おめでとう」 「開けてみてもいい?」 期待に胸を膨らませた彼女は、包みを開けた。 「金木犀の香水?」 「そう。好きって言ってたから」 「ありがとう。嬉しい!」 柚斗は覚悟を決めた。閉じ込めていたこの気持ちを伝えようと。 「あのさ、一華。好きだよ」 「え?」 一華は香水を落としかけた。彼女のつけていた金木犀の香りがする。 「ごめん。友達だと思ってた」 彼女は頬を赤らめていた。 「ちょっと衝撃的すぎて。考える時間ちょうだい」 「うん。待ってる。じゃ、また」 その日の夕方。彼女は死んだ。 俺の家に向かう途中、事故にあったらしい。 連絡してくれれば会いに行ったのに。 メールでも良かったのに。 電話でも良かったのに。 明日でも良かったのに。 俺が告白しなければ良かった。 俺の初恋はすぐ散ってしまう金木犀のように消えた。 残ったのは後悔と彼女の金木犀の香りだけだった。

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