東日本大震災
2011年 14時46分頃 東日本大震災発生。 俺たちを守ってきた地球は、 たくさんの命を飲み込んだ。 「逃げろ!早う逃げろ!でけぇ津波がくるぞ!」 迫りくる巨大な津波に愕然としている間にも、 大人しかった波は、 一瞬の間に人々の命をさらっていった。 荷物をまとめる暇もなく高いビルに登っていった俺たちは、 眺める光景に絶望していた。 「あ、ああ…」 波は俺の家を飲み込んでいた。 今までずっと過ごしてきた、 思い出のある家。世界でたった一つの家。 それさえも、波は包み込んでいく。 黒い波は、市内の病院も包んでいく。 目の前で命が奪われていくようだった。 見慣れた風景は黒く大きな波に一変した。 そんな一日も眠れぬまま夜は明けた。 自衛隊のヘリが俺たちを迎えにきて、 なんとか一命を取り留めた。 津波の引いた、 被災後の故郷を自衛隊の男と歩いていく。 どこもかしこも瓦礫だらけだ。 すると、瓦礫の前で歌う、 俺と同じくらいの年端のいかない少女が目に入った。 子守唄のような優しい歌だ。 歌う彼女は涙を流し始めて、 膝から崩れ落ちた。 「お父さん…お母さん…修太(しゅうた)…ぽち…!」 そう言って、 彼女は小さな手で、瓦礫を掴んだ。 きっとこの瓦礫は、 かつて彼女の家だったんだろう。 そこには彼女の家族の遺体も、 骨のかけらも無かった。 津波は、あったものでさえ なかったもののように奪っていった。 俺と同じくらいの子だって、 辛い運命を背負っている。 俺がその子に何か声をかけようと思った時、 自衛隊の男がそれを止めた。 「何も喋るな。」 その一言で、理解できた。 同情する言葉で、 この子を救うことはできない。 この男は、そう俺に言ったんだろう。 この残酷な運命の中で、 美しいものが残ったと言うのか。 それとも、残酷な運命だからこそ 美しいものが生まれたと言うのか。 答えもわからないまま、俺たちは生きる。