短編小説みんなの答え:5

お星様になるまで

「ねぇ、知ってる?死んじゃった人は、お星様になるんだよ」 私は星月(せな)。生まれてからずっと病院にいる。 だから人生で一度も外に出たことがない。ずっとベッドで寝たきり。 「星月さん、落ち着いて聞いてください。あなたの余命は残り1週間です」 (…え) 余命…って、あと生きる時間だよね。1週間…?私、あと1週間しか生きられないの…? 怖いはずなのに、怖くはなかった。ずっと死と隣り合わせだったから。 (ついに死んじゃうのか、私) 「こちらでも全力を尽くしますので、諦めないでください」 荷物を久々に探ってみると、こんなノートが見つかった。 「…“死ぬまでにやりたい100のこと”…」 中を見ると、びっしりいろんなことが書かれていた。 “猫に会う”“プリンを食べる”“石ころを蹴る” みんなからすれば、簡単なことかもしれない。 でも、そのリストの全てにチェックマークはついていなかった。 …最後のページには、こんなことが書いてあった。 “死んでからやりたい5のこと” “幸せになる”“ご先祖さまに会う”“神様に会う”“天使の輪っかを頭に乗せる” そして最後に、こう書いてあった。 「“お星様になる”……」 そういえば、看護師さんにこんなこと言われたっけ。 『ねぇ、知ってる?死んじゃった人はお星様になるんだよ』 その時は、本当に信じていた。 お星様になって、空から世界を見下ろす。それが夢だった。 そうすれば、外に出て散歩をしている気分になれると思ったからだ。 (…もう明日で死んじゃうかもなんだな、私) 薬もたくさん飲まされたけど、効果はなかったようだ。 「…最期に、病院一周しようかな」 ベッドから起き上がり、歩き出した。 窓の外を見た。野良猫がお散歩中だった。 (…猫だ!) これで“猫に会う”はクリア…っと。 一個だけクリアしただけなのに、すごく嬉しかった。 夜、寝ようとすると、激しい頭痛と共に息が苦しくなった。 (…もう、死ぬのかな、私) ナースコールのボタンを押そうとした。…が、押す直前で止まった。 (…星が、綺麗だな) 大きい星、小さい星、明るい星、目立たない星。 たくさんの星が、まるで「おいで」と言っているようにチカチカ光った。 きっと私は、この後お星様になる。 リストを取り出した。手が震えているから、線はぶるぶるになっていた。 でも、私は書き続けた。 (…おわ、った) 私が書いたもの。 “お星様になる クリアしてきます。このノートを見た人は、チェックをしておいてください” 「…ふふっ…なにやってるんだろう、わたし」 視界も暗くなってきた。意識も薄れてきた。もうすぐ死ぬだろう。 そうして私は、走馬灯を見た。 『看護師さん!お星様になれば、外に出られる?』 『えぇ、出られるわよ。外はねぇ、気持ちいいわよ』 私はなぜか満足して、目を閉じた。

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