短編小説みんなの答え:3

私の友達

「ねぇねぇ知ってる?最近来た子。」 「あー!知ってる知ってる!なんか、一人でぶつぶつ喋ってたんでしょ?こわーい。」 「そーそー、あーゆー子のこと、精神障害者って言うんだって。」 「えー、なんかかわいそー。」 転校してきてから、そんな声ばかり聞こえてきた。 「泉美咲です、よろしくおねがいします。」 みー子の言うことは無視して、無難な挨拶にしたつもりだったが、転校生というのはそれだけで目立つらしい。HRが終わった瞬間、私の席にクラスメートが群がった。 泉さんってどこから来たの?へー、遠いねー。やっぱ寂しい?ねぇ家どこ?うちの近くだー!趣味とかある? 最初はそんな質問だったけど、あとから、聞く人によっては不快に感じかねない質問も出てきた。 泉さん前の学校ではモテてた?彼氏とかいる?まだ未体験?結構タイプかも。付き合わない?www 正直に答えたのがいけなかったのだろうか。数分もするとみんな私がどんな人物なのか分かったようで、興味を示さなくなった。 その後も同じ趣味の子や、クラスのリーダー格の子が話しかけてくれるようになったが、噂はたつのも広まるのも早いようで、私のことを気味悪く思う人が増え、私は転校2週間でぼっちになった。 別に良かった。私にとってクラスメートなんて、全然大したことなかったから。 「みー子、今日クラスの男子が馬鹿やって怒られてたよ。面白かったね。」 「ミサキ性格悪!そんなんだから友達増えないんだよー。」 「別にいいもん。みー子がいれば楽しいし、みー子以外でこんなに楽しい人絶対いない。」 「…ずっとそうなの?」 「そうだよ、ずっとそう。みー子以外、私を好きな人なんていないんだもん。」 「そっかぁ…でもちゃんとコミュニケーション取れるようにならないとだめだよー?」 「むぅ…」 ほんとにそうだ、親も、クラスメートも、私のことなんて気にしない。みー子だけが、私の友達だ。 次の日、私の机には、立派に咲いた花が添えられていた。 「…なにこれ。」 「あ、いたんだ」 クラスのリーダー格の子だった。半笑いで答える姿が不愉快で、吐き気がして、つい苛立ってしまう。 「あなたがやったの?」 「そうだよ、可愛いでしょ?」 「そうだね、飾った人に常識がないのが残念だよ。」 「そうやって舐めた態度取ってるからだよ!」 パチン、という音が静かになった教室に響いた。 そこから私へのいじめが始まった。 まずは無視だった。クラスメート全員私の質問に答えてくれない、ということが続いた。元々業務連絡のようなものしかしてなかったので別に良かった。次はものを取られた。その次はものを壊された。その次は、その次は、といじめはエスカレートしていった。 なんでこいつは怒っているんだろう。から、どうすれば許してもらえるだろう。に思考が切り替わっていた。 「…もう嫌だよみー子。私もう耐えられない。」 「…辛いね。大丈夫…じゃないよね。」 「もう嫌だ…屋上に行くたび自分が飛び降りる姿を想像しちゃう。水を見たら自分が溺れる姿、コンロを見たら自分が燃える姿、制服のリボンは首を吊ってる姿…もうこれ限界でしょ…」 「…大丈夫だよ、私がいるでしょ?」 「みー子に何が…いや、そうだね…みー子が一番分かってくれてるよね。ごめんね。」 「ううん…こっちこそごめんね、都合いいことしか言えないや。」 こんなやり取りをしながら眠りにつく。そんな日常を送っていた。 次の日学校に行くと、何やら変化があった。 一人の女の子が私に話しかけてくれるようになったのだ。 泉さん、給食一緒に食べよ!泉さんって私の名前知ってる?もー、佐々野千夏だよ。 最初はそんな感じだったが、次第に私を美咲と呼ぶ様になり、自分のことを千夏と呼んでほしいと要求してきた。もちろん千夏もいじめられるようになったらしい。でも、一人じゃなかった。 「佐藤さんめっちゃムカつく!自分のことしか考えてないよ!」 「今に始まったことじゃないでしょ。」 「えー、でもここらで一回どんでん返しが…できないかぁ。」 「…ねぇ、なんで私に話しかけてくれたの?」 「んー、なんとなくさ、ずっと傍観者でいたんだけどね。ある日、『何やってんだ私!?』ってなっちゃって。なんか佐藤さんのご機嫌取りながら中学生活終えるなんて嫌だなって思っちゃったんだ。」 「…そっか、ありがとね。」 あれから私達は親友と言っていい関係になった。 そして、みー子は消えた。 「みー子、私友達できたよ。すごいでしょ。いっぱい話したいよ…ねぇ、みー子出てきてよ。」 あれからみー子は私のところに来なくなった。 私だけの友達。私にだけ見えてた、私の親友。 きっとみー子は安心したんでしょ?ずっと不安そうだったもんね。 親友がいなくなったのに、不思議と私の心は晴れやかだった。

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