修学旅行のバス
「みなさーん、今日からの修学旅行でバスを運転してくださる、○△さんでーす。挨拶をしましょう!」 白石先生の声が貸切バスに響いた。 白石先生は今日もすっごくおしゃれ。フレアジーンズに、ハートのデザインが書いてある白Tシャツ、ベージュのヘアバンドをつけている。 「よろしくお願いしまーす!」みんなと一緒に私も挨拶をした。 「それじゃあ、出発進行!」先生の合図とともにバスは動き出した。 「ねぇねぇ、日愛(ひな)!私こっそりお菓子持ってきたからさぁ、夜 恋バナしながら食べよっ!」 隣の席に座っている親友のルカがリュックをあさっていた。ポテチの袋がチラッと見えた。 「もうルカっ、バレたらやばいよぉ。夜の恋バナは大賛成!」私は窓の外を見ながらワクワクが止まらなかった。 「あらぁ、二人とも。恋バナなんて、いいねぇ」白石先生が通路をちょうど歩いてきていた。香水のいい香りがする。 お菓子の話は聞かれてなかったよね…? 先生は私と目が合うと完璧なウインクをパチっとさせた。よかった、聞こえてなかったっぽい。 恋バナのところはきこえてたのか。 私の好きな人を知っているのは白石先生とルカだけ。 「日愛、修学旅行なんて恋を発展させるためにあるんだよ!ね、先生もそう思うでしょ!」 「うーん、それ以外にもあるけど…」先生は周りをチラッと見てから小さい声で言った「恋愛も大事なポイントね」 ルカはパァッと笑顔になったと思ったら、ニヤニヤし始めて、私の方を見た。 「憲(けん)くん、すぐ近くに座ってるよ、なんかしたら!」 先生もニコニコとして頷いていた。 そう、私の好きな人、憲くんは、通路を挟んで反対側の席。私は窓側だから、ルカを挟んだ向こう側には憲くんがいる! 私は身を乗り出して、ルカの向こうにいる憲くんを一瞬だけ見てみた。 憲くんは、一緒に座っているアサヒくんと話しながら「アハハっ!」と笑っていた。 かっこいい! 「もう日愛ー、顔真っ赤だよ!」ルカに頭をポンポンっと叩かれた。 恋のプロ 白石先生、元気で(ちょっとうるさい)大好きなルカ、そして、近くの席には憲くん 修学旅行、最高!! 先生はバスの先頭に戻って行った。「音楽聞きたい人ー!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 先生がスピーカーのボタンを押した。 最近人気の恋の歌が流れている。先生、センス良すぎっ! みんなしゃべるのをやめた。小さい声で歌ってる人もいる。 車内はおっとりした雰囲気になった。 どうせみんなそれぞれの好きな人のこと考えてるんだろうな。 あぁ、もう、好きな人いないうちはどうすりゃいいんだ。 不意に隣が静かなことに気づいた。 隣を見ると日愛の頭をこくっと頷いた。 ん? 下から覗き込んでみルト、日愛はスヤァと寝ちゃっていた。 んもう、なんで日愛ってこんなにっ! なんでこんなに可愛いの!? 本人は気づいてないけど、日愛はモテモテだ。女子にも男子にも。 そりゃあ、優しくてなんかおバカで面白い日愛を好きにならない人はいない。 でも日愛に対する好きっていう気持ちはうちが一番強い自信があるっ!! なんとなくで憲くんのほうを見てみると、憲くんも日愛のことを見ていたみたい。 目が合った。よし、二人の恋を後押ししてやろう。 「憲くん、うちと席変わる?気分転換に」 「え、え、別にルカがアサヒの隣に座りたいなら、僕はそうしてもいいけどっ」明らかに緊張している憲くんはあわあわと答えた。 「いや、アサヒの隣がいいわけじゃないけど、ほら、気分転換ってことで」 席を変わる時に白石先生と目が合った。 普通の先生だったら立っただけで怒られるけど、白石先生は憲くんに気づくとパァッと笑顔になって激しく頷いた。 うち、いいことしたなぁ。 アサヒの隣に座る。 「おいー、なんで憲いっちゃうんだよぉ」アサヒが言った。 「もう、いいから黙ってらっしゃい」うちは言い返した。うちの目的はアサヒなんかじゃなくて、憲くんと日愛だから。 憲くんは座ると、深呼吸をした。そして日愛をチラッと見て、顔を真っ赤にして固まった。 緊張しすぎだよ! 一方、日愛はやっぱりスヤスヤ寝ている。 日愛の寝顔は世界一可愛い。気持ちよさそうに閉じている目、ぷにぷにのほっぺたがもっとぷにぷにになっている。 バスが到着した。結局うちはずっとアサヒと恋バナをしていた。 隣の席の方を見た。 あっ!!! 背が小さい日愛が憲くんの肩にもたれかかっていて、その頭に憲くんが頭を乗せて、二人ともすやすや寝ていた。 二人は手を繋いでいた。