ヤングケアラーな私
「失礼します。13時から面接の者です。」そう言うと、勢いよくドアノブに手を当てる。『ガチャ!』 「井上梨理花(いのうえりりか)13歳です!どうか…どうか!ここで…働かせて下さい!」 90度腰を曲げてお願いした。でも、その努力は一瞬で散っていった。 「君、ここ何回目だと思ってんの?第一、13歳だよ?少しは学べ!世間は甘くない!」 そう言い放たれ、追い出される私を、心配する素振りもなく面白そうに覗き込む正社員達。 家に帰り、机に散らばるノートを掻(か)き分け、「職ノート」と書き込まれた背表紙のノートをみつけると、 ふせんのところで開き、痛々しい赤色の蛍光ペンで「○○マーケット、13時面接」と言う文字を潰すように消していく。 今月のお金、どうしよう、と言わんばかりに自分の「入学祝い」と書かれた封筒に手を伸ばす。 そもそも、なぜ13歳の少女がお金に苦労しているのか。 これは、あるヤングケアラーの少女のお話だ。 私は、普通ではない5人家族のうちの1人。 まず、この家には、父型の祖母がいる(シングルマザーのため、祖父は居ない)祖母は認知症で、 介護が必要だ。例えば昨日は、ハンコがないと大騒ぎした挙句、冷蔵庫に入れてあったし、今日は 先程食べたはずの朝食を食べていないと言いだす。車椅子にも乗っているし、とても苦労している。 次に、両親。父は私が3歳の誕生日の翌日の朝、病気で旅立っていった。母は父がいないことの苦しみを 紛らわすためにお酒を飲んでいて、アルコール中毒だ。我が家の金欠の理由の一つである。 正直、悲しいのは分かるが、だからと言ってお酒の大量摂取は、体にも家計にも良くない。 最後に、姉妹について。姉はとある動画配信サイトで有名らしく、コスメを大量に買う。 その結果これも、我が家の金欠の理由になっている。姉は、世間では良い人呼ばわりだが、 家では真逆の存在。他人に全て押し掛け、終いにはお金だけかっぱらっていく。本当にどうかしている。 一方で、妹は重度の障害を持っていて、サポートはいつも欠かせない。自我が強く、最近よく振り回されている。 仕方がないけど。祖母と妹らは良いとして、母と姉は、何とかできるのでは?と思う。 母は父の死から立ち直って欲しい。姉はスマホの奥にいる人より、すぐそばに居る家族を見て欲しい。 そんな家族達に振り回されて数年。日頃のストレスで倒れた。スマホを持つ姉が救急に連絡し、 緊急入院。目が覚めるなり、家族の事が頭をよぎる。そんな時、ベテラン看護師さんが部屋へ来た。 要件は、「救急隊が家に入った時、『家の環境が気になった』と言っている。」とのこと。 嘘は付けず、全て話すと、私のような人は他にいること、そしてヤングケアラーと呼ぶことを教えてもらい、 次の日からカウンセリングが始まった。すると精神的にすごく楽になった気がした。ーーーーー ー週間後、ついに退院!不安気に家に入ると、あのカウンセラーさんと、 申し訳なさそうに立ち尽くす母と姉の姿が。その日を境に母と姉の 態度が急変。今では、生活保護制度と共に家族円満な家庭を築いている。 あとがき 長くなってごめんなさい。ヤングケアラーをテーマにしました。今では17人に1人がヤングケアラー だそうです。これを機にヤングケアラーの方について知って欲しいです♪