やっぱり、「そうだった」んだ。
ーオオカミは、泣いた。 ー泣いて、か細い声を絞り出した。 ー助けて、。 暗い夜の森。フクロウの鳴き声が響き渡る。 オオカミは、夢を見た。 甘い匂いに吐き気を催した。 お姫様ベッドの上、可愛らしい部屋に不似合いなほどに散らかったぬいぐるみは、悲鳴をあげているように見える。 薔薇色のガーランド、絵本、ドレッサー。 何もかもが甘くただれた匂いに包まれていた。 おもむろに立ち上がり、目を擦った。 すると、寝ている自分が見えた。一瞬。 もしかして、俺は夢を見てるんじゃないか。 寝る前の記憶をたどると、 疑念が、確信に変わっていくのが感じられた。 だけど、抜け出そうとしても、抜け出せなかった。 とりあえず、扉を開ける。 お城…だろうか。 横の格子に嵌まったステンドグラスが美しかった。 城をまわってみたものの、人の気配はなかった。人は住んでいないようだ。 大広間に向かい、ソファに座った。 埃が舞う。 どうしよう。抜け出せない。 現実に戻りたい。 と、考える。 ふと気づくと、女の子が隣に座っていた。 ここには人はいないはず。 なんとなく、「誰?」と聞いてみる。 女の子は、透き通った声で「ナナ」という。 「お母さんは?」 『いない。おじいちゃんとふたり」 祖父とふたりで住んでいるようだ。 「そっか」 話が終わってしまった。 後悔する。 女の子ーナナは、立ち上がり、向こう側に歩いていった。 と思うと、ハラハラと消えていった。 驚きのあまり、「えっ」と声が出た。 何、今の。消えた。 目を開けた瞬間、俺はベッドの上にいた。 現実に戻ったようだ。 ふいに右を向くと、ナナが立っていた。 驚いたものの、 「大丈夫だよ、ナナ」と話しかけると、 ナナは微笑んで、たんぽぽの綿毛みたいに消えていった。 やっぱり、「そうだった」んだ。