風船のメッセージ
「かなり増えたね」 見上げると、天井にたくさんの風船がくっついている。 ふらふらしながら、長いひもをだらりとたらして。 「別にいいでしょ。たくさんあった方が、にぎやかで」 ベットに横たわっているユミは手を伸ばして風船を一つひきよせた。 ユミは小さいころから本当に風船が大好きだった。高校生になった今でも、ユミの家にはたくさんの風船がういている。でもこの前は10個くらいだったはずだけど、もう気が付くと20個にふえてる。 「いくらそんなに好きでも、これは多すぎじゃない?」 「そういったんだけどね。おばあちゃんったらどこかで配ってるの見つけるといつももらってきちゃうんだって」 ユミの表情から笑みが落ちて、困ったような顔になった。 「エリカ、怒らないで聞いてくれる?」 「どうしたの?」 「もう、ここには来ないで」 「・・・どうして?」 「私はもう、わかってるんだ。自分が長くないこと」 私は言葉が出なくなった。 ユミは深刻な持病がある。しばらくはおさまっていたんだけど、半年前に再発して、それからユミはどんどん弱っていった。会うたびにやせていくユミの姿を見るのはつらかった。 「お願い。もうこれ以上弱っていく姿をエリカに見せたくないの」 「そんな・・そんな悲しいこと言わないで」 「泣かないでよ」 「だって・・ユミに会えなくなったら、私・・・」 「毎日、この子達を窓から飛ばすから」 ユミは持っていた風船を窓の外に飛ばした。 すうーっと、音静かに風船は飛んで行った。 「朝9時に必ず一つ飛ばすから。元気だよってメッセージ」 「大切なものでしょ。本当にいいの?」 「いいのよ。わたしがしぼむ前に、この子達を自由にしてやりたいし」 「ユミ・・・」 それからわたしはユミの家に行かなくなった。 行ってもあってくれないから。その代わり、毎朝9時、私はユミの家の方角を見ている。 静かな中、一つの風船がユミの家からふわふわと飛び出す。 おとといは白い風船が飛んで行った。 昨日は赤い風船だった。 今日は光る命の風船が飛んで行った。 私は泣いて泣いて、空を見つめた。