【30min.】掌で季節は巡る
天頂の方から送り込まれた光が、硝子を通って柔らかいベージュを泳いでいる。水色の影を作る瓶から生まれた雫が伝って、暖かいブラウンに模様を描いた。 セミ合唱団の覇権は、もうヒグラシに移ったようだ。 「ねぇ、もう夏が終わるよ」 少年の言葉に呼応するように、太陽がぐるりと動く。青のキャンバスは橙に色替えをしたようだった。 「もうそんな季節か」 青年は椅子に座ったまま背伸びをした。遠くで鈴のような音が聞こえる。まだ夜じゃねぇのに。そう言いながら笑った。 赤みを帯びたベージュに、ひらりひらりと秋の影が落ちる。彼らが上を見上げると、硝子の先に葉がそっとあった。二人は目を合わせ、小さく笑った。 「そろそろ、秋も終わるね」 赤い赤い太陽は静かに、且つ堂々とその姿を消した。黒という表現が一番しっくりくる、そんな黒ではない色が外を覆い尽くし、白を基調とした鮮やかな輝きが点々とそこにいた。 「暑いよりかはマシかもしれねぇ」 小さなドーム内の灯りと星以外は闇。そんな中、光を受けながらふわりと舞い降りる白いものがあった。それらは、暗い地面にすぐ溶けていった。 「もうすぐ、暖かくなってくるね」 太陽の沈んだ所とは真逆、山際がうっすらと白んできた。段々と空が明るくなり、光の球は上がってきた。外は地面も山も新緑が彩っていた。 「やっと春だな」 遠くに見える木の一部は薄桃の飾り付けがされている。草原は点描画になった。淡い空では鳥のオーケストラが開催されている。 春だと青年は笑った。春だねと少年も笑った。無邪気な笑い声が、硝子にやわく溶けていった。 そしてまた夏が、秋が、冬が、春が。来ては過ぎ去っていく。巡っていく。永遠に飽きない二人に、見守られながら。