短編小説みんなの答え:2

握ったバット。

目が覚めて、時計を見る。 今日は10月28日。 「今日も、か…。…あれ?」 気づいたら、「今日も」なんて 呟いていた。 今日が初めての今日なのに。 なんだか最近、こんなことが 多いような、初めてのような。 一人暮らしだから 昨日買った朝食のパンも、 今まで一度も食べたことはないのに、 味を知っているような感覚だった。 制服に着替えて学校に向かうと、 いつも一緒に学校に行っている 幼馴染の由時(よしとき)という男子が 私の頭をポン、と叩いた。 「んはよー、永羅(えら)。」 「髪崩れるからそれやめてって何回言ったらわかんのー?」 「……今初めてしたけど、まぁ悪かった。許せよー!」 そう言って笑いながらまた由時が私の 頭をぐしゃぐしゃにする。 「やめてよー!」と言ったけど、私も笑った。 そんなことを道の端でしていると、 黒く、大きな車が音を立てながら 走ってきた。 「ねえ、あの車さ、私たちの方に走ってきてない?」 車はどんどん私の視界の中に広がってくる。 ぼーっと見ていると、もうすぐ近くまで 来ていた。 「危ない!」 そう言って由時は私の 体に覆い被さった。 体にドン、と打撃が加わる。 由時と目があった。 一緒に倒れた由時の温かさと一緒に、 私の頭から伝う血が地面を濡らしていった。 「このガキが例のタイムリープ能力者…。 時が戻れば記憶が消えるなんて、運が悪いですね。 もう息してないので、任務完了です。」 最後に聞いたのは、そんな声だった。 目が覚めて、時計を見る。 今日は10月28日。 朝食のパンを食べてから 幼馴染の由時と学校に行く。 「やめてよー!」 髪をぐしゃぐしゃにする由時が 前髪の隙間から見えた時。 由時と目があった。 (あれ…これ、前にも…ずっと、ずっと前も、 その前も。同じことしてた気がする…) そんなことを考えていると、 黒く、大きな車がこっちに 向かって走ってきた。 (前も、そのずっと前も。私は、動けなかった。 同じことしてた…そうだ、この後は) 全てを思い出して、 私は近くの子供が持っているバットを 取り、走る車に飛びかかった。 「永羅!!」 由時が名前を呼んだ。 「由時!一緒に、“明日”を見よう!」 私はそう由時に言って、 車のフロントガラスを バットで叩き割った。 「なんだこのガキ!!」 車のボンネットの上に乗った私を、 割れたフロントガラスの隙間から 由時と私を殺した男が殴った。 だけど私は諦めずに、 バットを握る。 それから最後に聞こえたのは、 救急車の音だった。 ここは病院。 目が覚めて、時計を見る。 日付を見て、 私は病室にいた由時をだきしめた。 __あとがき__ 永羅と由時は無事に“明日”を見ることが できたのか。 想像は自由です! じゃ。

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