短編小説みんなの答え:2

好きだった

僕は男だ。そのくせして男が好きな「変なやつ」である。 中学二年の春、僕は小学時代仲の良かった男友達と同じクラスになった。僕はそこまで明るいキャラでもなかったから、クラスのなかに友達はほぼおらず、その友達とよく話していた。 その友達は猫みたいなやつだった。 機嫌の良いときと悪いときがかなりはっきりしていて、悪いときはどんなに親しい友人にもきつい態度をとっていた。僕に対してそんな態度をとることも、もちろんあった。 僕は、ある日気付いた。 「その友達が好きだ」と。 それは、友人関係としての好きではなく、恋人として好き、という感情だった。 僕はこれまでの人生で「恋人」という存在がいなかったので、これが本当に「恋人としての好き」なのか分からなかった。 しかし、なんとなくそんな感じがしていたのだ。 その日から、僕は彼のことばかり考えるようになった。 彼が誰かと一緒に歩いていたら、それだけで嫉妬を覚えた。 彼が笑っていたら、それだけで口元が緩んだ。 そして、僕はだんだん自分の気持ちに悩むようになった。 「本当に僕は彼のことが好きなのか? 僕は彼に思いを打ち明けるべきなのか?」 なにより不安だったのは、彼が僕のことをどう思っているか、ということだった。 仮に、僕が彼に告白をしたとする。 でも、もし彼の答えがNOだったら。 もし彼が、僕のことを蔑んで「変なやつ」と貶してきたら。 そう考える度に不安になって、僕は時折涙を溢すようになった。 その日、僕はいつものように学校に行って、彼が登校してくるのを待っていた。 しかし、いつまで経っても彼は来ない。そのうち、朝のホームルームが始まると、先生の口からあることが告げられた。 「昨日、笠木が交通事故で亡くなった」 笠木。それは友達の名前だった。 その言葉を聞いた瞬間、視界がぐわんと揺れた。 信じられなかった。いつものように話していた存在が急に消えたことに行き場のない虚無感を感じた。 僕がいくら彼に好きと言おうと、もうその答えは絶対に帰ってこないのだ。 放課後、僕は彼が亡くなったという場所に行った。 そこには何束かの花が手向けられていた。 その情景を見て思わされた。 「自分が彼を愛している、という気持ちは間違いだったのだ」と。 第一、男が男を好きになるというのがおかしかったのだ。それに、彼と僕が釣り合うはずもない。 最初から全部、間違いだった。 黙祷を捧げたあと、僕は呟いてみた。 「ずっと好き『だった』」 声は車の音に飲み込まれ、ついに答えは帰ってこなかった。

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